* ふぞろい四重奏 *

□第四章“じい”VS“じい”
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( 結局あやつは戻ってこなんだ
 … そして今のこの状況‥‥
 
 只事とは思えぬ・・・)




国王夫妻に気付かれぬよう顔には出さず一人思いを巡らせていると、最前部屋を出て行った家臣が―


「った、 大変にごさいますっっ
 !!!」

けたたましく息を弾ませながら部屋に入って来た。


「何事じゃっ!王様の御前であ
 るぞっっ!!」

「はっ!申し訳ございません!
 …ですが、カイト様の机の上
 に“この様な”ものが…」


男から手渡された『一枚の紙』を見て、アーキオ・プ・タリ・スクーはカッと目を見開いた。



「なっ、なんとな?!!」

「どうした“じい”?
 何と書いてあるのだ?」

不安げな表情で食い入るように彼を見つめるダック王。

「王様っ…
 それが‥‥‥」


何とも言えない複雑な表情で手渡されたその紙を見た王は

「なっ、…なんという事だ…」

と呟き茫然自失、

続いて王妃はショックのあまり目の前が真っ暗になり、椅子から落ちそうになるのを何とか堪えた。

その手から床に落ちた紙には


『父さま 母さま ごめんなさい
 少しの間出かけてきます 
 イグルも一緒だから大丈夫
 何も心配しないで下さい 
 なるべく早く戻ります
           カイト』


と両親の気持ちを慮ってか、大きく元気な字でそう短く書かれてあった―



「王様、王妃様、大丈夫にござ
 いますかっ?」


「…ん… ああ、 すまぬじい。
 大丈夫だ。
 王妃、大丈夫か?」

「……はい…… 大丈夫でござ
 います…
 王様、 一体 どういう事なの
 でございましょう?このよう
 な事…」

「うむ…
 じい。 何か“心当たり”は
 ないか?」

「それが、 全くもって 思い当
 たらぬのでございます…

 王様!誠に申し訳ございませ
 んっ。 イグルが付いていな
 がら、このような事に・・・」


「…カイトの “強い意志”が
 あっての事であろう。 気に
 せずとも良い」


「王様…」





温かな王の言葉に胸が熱くなる―

と同時に


( 何故…? イグルはお止めせ
 なんだ……
 
 カイト様の強い意志があって
 の事………

 
 もしや!!)


と思い付き、最前の家臣を呼び寄せ何やら耳打ちすると―


部屋を去るその背中を、祈る思いで見送った。
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