* ふぞろい四重奏 *
□第三章 宿での出来事
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その日―
ベルガは生まれて初めて海の上で朝を迎えた。
たった一人での船旅…そしてこれから自分がしようとしていることに興奮し、眠れずに夜を過ごした。
甲板からひとり、昇りゆく朝日を見つめる…
揺れる水面に光る朝日がキラキラとまぶしくて、自然と目頭が熱くなった。
( なんてキレイなんだろう… )
そう思うと同時に、自分を心配して同じように眠れぬ夜を過ごしたであろう皆のことを思い胸が痛んだ。
「少しやりすぎたかな…」
( でも、仕方なかったのよ成り
行きなんだし…アタシだって
ホントはただカイトのところ
でちょっとかくまってもらっ
て、パパたちを懲らしめたら
ちゃんと帰ろうって思ってた
んだから…
夜って、あんなに長かったん
だなぁ… )
「よう、嬢チャン」
物思いに耽っているところに、相変わらず気持ちのいい大声が響いた。
「おはようギャ・クサン」
「…早いな… 寝付けなかった
かい?」
彼は少し心配そうに聞いた。
「ううん、そんなことないわ。
せっかく早く目が覚めたから、
船上からの朝日を見てみたい
ってそう思っただけ」
「そうか… もうすぐだな、エ
ミューの町に着くのも。
さびしいなあ、あと少しで嬢
チャンともお別れか」
「…きっとまた会えるわよ…
今度は家族みんなで乗りに来
るわ」
「そうだなっ」
ふたりはまぶしい朝の光に包まれながら、ニッコリと笑い合った。
数時間後―
ふたりは抱き合って別れを惜しみ、ベルガはたったひとり“未知の土地”へと踏み出していった―