* ふぞろい四重奏 *

□第ニ章 姫の家出と二人の勝負
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町は活気に溢れていた―

物珍しい食べ物の屋台や、大陸の反対側の国や町から買い付けてきたという色とりどり、様々な生地の服やアクセサリーの数々…

「あーたのしいー、ちょーたの
 しー。今日はくちうるさい
 キースもいないし、サイッコ
 ーにしあわせっ!」

と、名残惜しそうにあちこち立ち止まっては品物を手に取っていたが、ワンスに促されて「とりあえず食べてからゆっくり見よっ」と店に向かった―


町の中程迄行くと、先の方に相当儲けているのだろう、他の店とは明らかに違う構えの派手な装飾の店が目に入った。

< 大人気!!!今注目のラ・メン とギョ・ウザ の店 ス・ラーユ >

というイヤミなまでに大きな看板が誇らしげに掲げられている。

「大人気っていうわりにはずい
 ぶん空いてるっぽくない?王
 族会のみんなが、いつも行列
 らしいよって言ってたのに…」

店の前は人の往来はあるものの、入口の脇に数人厳つい男たちが立っているだけで、客はいない様子だ。

「兄さま、お店間違えてるわよ
 きっと」

「そ、そんなことはないと思う
 よっ…」

ワンスの様子は明らかに不審だ。


( …なんかおかしい )

ベルガのレーダーが反応し始めた。

「さぁ、ベルガちゃんいそぎま
 しょお」

「急ぐ!?」


( やっぱりおかしい。遠目から
 見ても店はガラすき席は十分、
 今日は一日外出の予定で時間
 はたっぷりのはず…この状況
 で急ぐ?
 やっぱりおかしいっ、なーん
 かおかしいっ、これはゼッッ
 タイ何かあるわよっ )

ベルガは警護兵に前後に挟まれるように歩いていたが、それとないふりで一番後ろに回った。

その様子に周りがソワソワし始め、なんとか元の状態に戻そうとしているのがわかった。

予想は確信に変わった―

( えーーい、もうめんどくさい
 っ )

ベルガは小走りに行って、店の入口から浅く顔を突っ込み素早く注意深く中を見回した。

『ゲッ!? イヤ・ミー王子とお
 付きのヒゲじいっ!!!』

店の中は貸し切ったのだろう誰も客がおらず、外からは見えないように衝立てをした一番奥の席にふたりは座っていた。幸いにもふたりはベルガの存在を認めていないらしく、何らかを話し合っていた。

( パパ、じい、もーーゆるさな
 いからっ! )

この一月、虎視眈々と今日の計画を練っていただろうふたりを思うと悔しくてたまらなかった。

( あーそう、あーーそう、こう
 いうことするのねっ、よーー
 くわかった。だったらこっち
 だってやってやるわよっ……
 家出してヤルッッ!! )

ベルガは心に決めると、ふたりに気付かれないよう息を潜め後退りで外に出て、オロオロしている様子の一行に向かって、

「ママッ、兄さまっ、
 あたし、家出するからっ!パ
 パたちにそう言って」

と叫んで、市場の雑踏の中に姿を消した―
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