名を刻む者

□第6話
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だがそれは実に僅かな時間だった。
警告が消えて殆ど間を置かずまたもロックされる。

的になるわけにはいかないので歩かせていた機体をブーストで移動させる。直後機体のあった場所に何かが着弾した。
着弾時の音からして、撃たれたのはスナイパーライフルであることは容易に解ったが、攻撃してきた敵の位置は把握出来なかった。

前方に移動していたのを止め後方に移動する。今度は機体の前方を右から左へと弾が横切った。敵が右方向に居ることを理解して、そちらへ旋回しつつ移動を開始した。
その間も攻撃は続いていた。しかし小刻みに回避運動を行っていたため、被弾することは無かった。途中で攻撃が盛んに行われ始めた。レーダーに敵影が映る。

敵は2機に増えたようだ。
視界にその姿を捉える。CR-MT83RSだ。着弾時の反動が大きいスナイパーライフルを装備した、集団戦では厄介な敵だ。
それぞれ建物の影に隠れようとしていた。

エネルギーが満タン近くまで回復しているのを確認してOBの起動ボタンを押す。高周波数のチャージ音が空気を震わせる。
次の瞬間膨大なエネルギーをコア後方に噴出させ、瞬く間に時速700km以上にまで加速する。
シートに強い力で押し付けられながらも、歯を食いしばりそれに耐える。相対距離が100を切ったところで少し機体を浮かせOBを解除した。

慣性による速度を保ったまま右に旋回させる。地面に接触したところでブーストペダルを踏み込む。
建物の陰に隠れていた敵をサイトが捉える。刹那トリガーを引きレーザーが敵を射抜いた。2次ロックは完了していなかったものの、完全に直撃はした。
直後、予想した通り敵のマーカーは消失した。

後ろに居る機体を狙おうとそのまま旋回しようとしたところで、突然機体が大きく揺れた。
スナイパーライフルが被弾したのではないのは確かだった。でなければこれ程の揺れの説明がつかないからだ。

レーダーには7時方向に青い点が映っていた。

「BATか!?」

誰に言うでもなく俺は叫んだ。BATとはMT10-BATのことである。
しかしそちらよりも先にCR-MT83RSを撃破すべきと判断、旋回を続け先程と同じようにサイトに敵が入ったところでレーザーを撃った。

今度は直ぐにMT10-BATとの距離を取りながらそちらに機体を向かせようとした。
無論回避運動をしながらである。

だがまたもレーダーが後方に敵が居ることを示していた。
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