名を刻む者

□第2話
3ページ/24ページ

「ほら用件は言ったわよ!わかったらさっさとどいて!」

「いや、でも先に来てたのは俺だし………。」

「確かにそうかもしれないけど。」

そうかもじゃなくてそうなんだよ。

「陰気な顔してそこに座られてるのが嫌なの!!」

呆気に取られてしまった。なんて我が儘な女なんだ。それしか感想が思いつかなかった。

ただ見ず知らずの人間に言われる筋合はない。一発ガツンと言ってやろうと思い、腰を上げた。

「陰気な顔って言うけどなぁ。こっちだって事情が…あって……だな………。」

途中からどんどん声が小さくなってしまった。

立ってみて初めて相手の顔が見えたのだが、なかなか可愛かったため毒気が抜かれてしまったのだ。

燃えるような赤い髪を後ろで束ねてポニーテールにしていた。ブラウンの瞳には負けん気の強い性格がよく表れている。身長は低いが中々迫力もある。年は16、7歳と言ったところか。

「何よ?私の顔に何か付いてる?」

どうやらじっと眺めてしまったらしい。

「はっは〜ん。もしかして私があんまりにも可愛かったから見取れてたの?」

顔をニヤつかせてそんなことを言ってきた。あんまりにもとは思っていないが、一応図星であったためまた腹が立った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ