名を刻む者
□第2話
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「ほら用件は言ったわよ!わかったらさっさとどいて!」
「いや、でも先に来てたのは俺だし………。」
「確かにそうかもしれないけど。」
そうかもじゃなくてそうなんだよ。
「陰気な顔してそこに座られてるのが嫌なの!!」
呆気に取られてしまった。なんて我が儘な女なんだ。それしか感想が思いつかなかった。
ただ見ず知らずの人間に言われる筋合はない。一発ガツンと言ってやろうと思い、腰を上げた。
「陰気な顔って言うけどなぁ。こっちだって事情が…あって……だな………。」
途中からどんどん声が小さくなってしまった。
立ってみて初めて相手の顔が見えたのだが、なかなか可愛かったため毒気が抜かれてしまったのだ。
燃えるような赤い髪を後ろで束ねてポニーテールにしていた。ブラウンの瞳には負けん気の強い性格がよく表れている。身長は低いが中々迫力もある。年は16、7歳と言ったところか。
「何よ?私の顔に何か付いてる?」
どうやらじっと眺めてしまったらしい。
「はっは〜ん。もしかして私があんまりにも可愛かったから見取れてたの?」
顔をニヤつかせてそんなことを言ってきた。あんまりにもとは思っていないが、一応図星であったためまた腹が立った。