貰い夢と捧げ夢

□愛瑠様へ 相互記念(オリジナル)
1ページ/4ページ



「・・・ねぇ和也」

「ん?」

「お腹空かない?」

「これが終わったら近くのスタバにでも行くか」

「やだ」

「え?」

「今行きたい」

「えー・・・」

 いかにも面倒だといった声を漏らした和也を
シャーペンを握りしめながら凪は理不尽だとでもいう風に睨み付ける
実際に凪の空腹感は半端ではない
今にも大声を発しようとする腹の虫を抑えようとすることに必死なのだ
視線を落としたすぐそこにある紙面になど集中できはしない
今すぐに美味しいものを胃袋に納めたい
できれば甘くてクリームがふんだんに使用されているやつがいい

「だってここに来てから何時間経ったと思ってんの?」

「5、6時間」

「その間ずっとやってることは?」

「課題の片付け」

「でしょ、つまり私がお腹空いても何もおかしくないわけ」

「おい日本語が成り立ってないぞ」

「だから今すぐスタバ行こうよ、つか行きたい」

「聞けよ」

 お腹空いたお腹空いたとごねる凪に和也が盛大な溜息を吐く
集中力が切れた途端すぐこれだ
後は両面印刷の古典のプリントが二枚あるかないかだというのに全く
集中すればさっさと終わるだろうに全く
本気を出せば朝飯前だろうに全く
古典が教科の中で一番得意だろうに全く!

掛けていた眼鏡を外してぐっと伸びをする
凪はまだ空腹のあまりぶすくれたまま机に突っ伏している
偶に会えたというのにこれだ
学校が違うというのに
勉強がわからないから教えてくれとか
テスト課題を片付けるのを手伝ってくれとか

凪は進路が特に決まっていないからと商学校に
和也は薬剤師になりたいからと進学校に
だからこそこうやって凪の勉強を見てやることができるのである
しかしおかしい、凪はここまで勉強ができなかっただろうか
幼馴染みが故にわかることなんだが
小、中学校では人に教えてもらうほど勉強ができないわけでもなかった筈だ


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ