少年陰陽師2

□第五十部
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「まだ気に掛けているのか」

 何をすることもなく柱に寄りかかって
ぼんやりと空を眺めている勾陣の隣に並んだのは
よく一緒に行動している玄武と太陰の二人であった

問いかけとして投げかけられてきたのは
あの日以来姿を見せない晴霞を心配する昌浩のことだ

「ああ、どうやらそうらしい」

「そうか」

「まったく、相変らずのお人好しよね」

 頷いただけの玄武に
不満そうに目を眇める太陰
二人とも昌浩が何故晴霞のことを気にしているのかわからないらしい

「戻ってこないなら戻ってこない、それだけのことでしょ」

 聞く者によっては厳しいとも取れる太陰の台詞に
勾陣は特に肯定も否定も口にすることは無く
ただ黙って目を伏せる

戻ってこないならばそれまでというのは、確かにそうかもしれない
晴霞は特に政の重要な部分を担っているわけでなければ
この世に必要とされているわけでもない
あの存在が一つ欠けたところで
世界には何の影響も無いのだ
ましてや特に親しいわけでも無いから
消えたところで、勾陣が同情することは決してありえない

「・・・たとえ我らがそうでも、昌浩は違うのだろうな」

「何で?」

「それは我の知るところではない」

 すげなく切り返された疑問に太陰が少しばかり不満そうな顔をした
なによそれ、と小さく呟きつつ伸ばしていた膝を折る

(私もあれも、昌浩がいたからああしたまで)

 知るところではないという玄武の言葉が胸の内に沈んでいく
そうだ、元々知る由も無いのだ
あの場に居合わせた勾陣も騰蛇も気にしていたのは昌浩のみ
昌浩が望んだからこそ行動を起こしていた
しなければよかったなどと考えたことは無い
結末は既に訪れているのだ
今更何をどうしたとして覆すことはできやしない
たとえ、迎えられた結末が悲劇的なものであったとしても
勾陣には何も関係は無いのだから


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