少年陰陽師2

□第四十七部
1ページ/3ページ



(春にも物忌みがあったな)

 自分の後輩に当たる直丁が物忌みで出仕を控えると耳にしたのが丁度半刻前
隣で作業をしている同僚が世間話のように軽い調子で話してくれたのだった
どうやら今回も前回と同じく七日間は出てこられないらしい
戻ってきた頃にはまた山積みの仕事が待っていることだろう

(全く、難儀なことだ。・・・それにしても)

 普段から、体よく押し付けられた仕事を片っ端から相手にしていく姿を思い出す
一つ片付いたそばからまた一つ増えていく仕事を何とか片付けようと
いつも誰より遅くに帰っていた彼は
あの日、一体何故飛び出していってしまったのか
あまりにも突飛な行動であったから今日一言言ってやろうと思っていたのに

(七日も空けると忘れてしまいそうだ)

 音も無く落とされた嘆息が緩やかに紙面をなぞり
まだ乾ききっていない字から水分をさらっていく
綴られている文書は昨日彼が担当していたものと同種のものだが
これはこれでまた量が半端ではない
こうして一度誰かが休んでしまうと
その分誰かの負担が増えてしまう
彼の人となりを知っているからこそあまり思うところの無い敏次であるが
他の者はそうもいかないだろう
大半の者は不満だって抱えてしまう

(・・・早く、帰って来い)

 どんなささやかであろうとも
周囲に敵のある状況など
君には酷く不似合いなのだから


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ