少年陰陽師2

□第四十五部
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指先が頬に触れる本当に寸前
微笑む金燐の姿が散った
確固として存在していた重みを失った腕に
確固として視得ていた存在がなくなった瞳に
散った白金色の螢が映り込み
譲刃の呼吸が静かに止まる
燐光は弾けた瞬間だけ儚い自由を手にし
次の瞬間にはその自由を手放した
惹き寄せられるように白金色の蛍は集い
カタワレの核がある場所に沈んで溶けていく
入ってくるそれは金燐の霊そのものにして
まごうことなき金燐のココロ
入ってくる度に
溶け込んでくる度に
彼女の記憶が浮かんでは
自分の記憶に融けていく
それがどうしようもなく優しくて
どうしようもなく柔らかくて
でも見える記憶も
映りこむココロも
真っ暗な世界で淋しかった想い出も
全てが私と同じで
しかし全く違って
身が割かれる程に切ないのに
どうしようもないくらいに愛しくて
そして、この上無く温かかった
全ての白金が私の中へ融けきったそこは
まるであの優しい焔を宿したかのように
自分のものではない温もりが静かに宿っている
宿っているのに

「―――っぁ、ぅあ、あ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 空洞を抱く腕の中だけが、酷く寒い



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