少年陰陽師2

□第四十一部
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 硝子が砕け散ったような音が辺りに木霊した時
濁流のような映像が頭の中に雪崩れ込んできた
外部からの多大なる干渉に本能が拒絶を示すも
干渉が止む兆しはない
思わず瞼をきつく閉じたその暗闇に
走馬灯の如く沢山の情報が駆け抜けていく

不吉な音が力なく耳朶を叩く
周囲に散らばった鮮烈さに息を呑む
しかし触れられる寸前でその身が崩れ落ち
全てを呑みこむ色の中に深く深く沈んでいく
引き揚げねばと鏡面に置いた掌は
堅い感触を伝えるばかりで
水にあらざる水は他者の侵入を頑なに拒み
遠ざかる手を掴むことを許してはくれない

名を呼んだ
何度も何度も繰り返し
教えてくれた名を、その者の在り様を
嗚呼、だが彼が呼ぶのは仮初の名だ
いくら想いを籠めて呼んだとて
きっと届くことは無いのだろう
彼の者の本来の姿はもう
誰の知るところではないのだから



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