少年陰陽師

□第三十五部
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 関係ない
問いかけて早々切り返された一言に
昌浩の眉根に縦縞が寄る

「関係無いって、そんな言い方無いじゃないか」

 不機嫌さの増した声音に
相対を始めてよりずっと姿勢を崩さない晴霞は
特に感情を露にすることもなく
こともなげに昌浩の言葉を切り捨てる

「見ず知らずの賊に襲われたことが貴方とどう関係するって言うの」

 なんて、真っ赤な嘘もいいところだ
晴霞を斬りつけたのは紛れもない朱雀であって
決してそこらにいる賊なんかではない

だが、朱雀自身にどのような意図があったにしろ
彼の行動が目の前の少年にも関わりがあるのかと問われれば
憶測の範囲をでないことを前提として
晴霞は否定を意味する答えを突き返すだろう

「じゃあ、金色の髪をした君は何で俺にあんなことを言ったんだ」

 与えられた回答に満足の行かない昌浩が
更に問いかけようと重ねた言葉に
今の今まで平淡そのものだった晴霞の顔付きが一変する

「金色の髪って?」

 語気を強め距離を詰めてきた晴霞に
予想外の反応を示され驚いたらしい昌浩は軽く仰け反り
隠形していた六合が今にも手が触れそうなほどの距離に顕現する
その行動が自分への牽制だと悟った晴霞は
渋々といった体で六合を一瞥すると
浮かせた腰を元の位置に降ろした

「で、どういうことか説明してもらえる?」

 何故か形勢が逆転してしまった
座り直しても変わりのない勢いに少々押され気味に
しかし負けじと事情を説明する昌浩の前で
威嚇するような険しさを帯びていた表情が
徐々に苦虫を噛み潰したようなものに取って代わっていく

変化の著しい晴霞の様子を訝しげに眺める昌浩の向かいで
何を思ったのか晴霞は唐突に立ち上がり
出口を塞ぐ御簾を跳ね上げんとしたのを
今頃になって漸く動き出した昌浩が
慌てた様子で手を伸ばす


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