少年陰陽師

□第三十三部
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「で、もっくん何かわかる?」

 五条大路と東洞院大路が交わる地点に立った昌浩は
ひとしきり辺りを見回し
通りに人がいないことを確認して一言
現在昌浩の肩に乗っている
自分よりも遥かに五感の優れている物の怪に丸投げした

投げられた物の怪はやれやれと言った体で目を眇め
軽やかな身のこなしで地面に降り立つと
感覚を研ぎ澄ませて辺り一帯にある何かを探る
今こうして何か手がかりを探している物の怪の機嫌と言えば
これが結構な角度で傾いていた
まぁそれも、当然と言えば当然だろう

昨晩物の怪は夢から帰ってきた昌浩に文字通り叩き起こされ
ゆめうつつの状態で捲し立てるような説明をもらい
今すぐにでも飛び出していこうとする孫を必死に引き留め
調べに行くのは良いがせめて日が昇ってからにしてくれと
頼み込むように説得してなんとか勢いを削ぎ
真夜中だというのにやはり抜け出そうとするのを
どうにかこうにか寝かしつけたのは記憶に新しい

「妙な匂いがするな」

 丸投げされた仕返しとばかりに
ああだこうだと昌浩の耳に痛い小言を並べていた物の怪だったが
微かなそれを捉えた瞬間ふっと声の高さを落とした
呟かれた妙な匂いについて昌浩が問いかけるよりも前に
方向を定めた小さな体躯が地を蹴る
何を見付けたのかと追いかける昌浩の前で
唐突に物の怪が立ち止まった
どうしたのだろうかと物の怪同様立ち止まった昌浩は
そこにあるものを見て静かに瞠目した

「・・・まさか」

 昌浩が視線を落とすそこは
明らかに何かがあったのだと認識させられるほどに
砂ばかりの地面はどす黒く
禍々しい彩に染まりあがってしまっていた


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