少年陰陽師
□第三十三部
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それが誰のものなんてことは普通わからない
けれど昌浩は夢を視た
彼女ではない彼女に此処に向かえと告げられた
こうなった原因が夜盗や賊なら
わざわざ夢になんて出てきやしないだろう
それでも彼女は夢に現れた
昌浩の前に姿を見せた
ということは、少なくともこれは自分に関係する何かなのだ
夢に現れた金色は彼女とは違った
以前彼女とは夢で逢えたのだから
出てこれないというわけでもないのだろう
文句なり何なりがあるなら本人が直接言って来る筈
しかし昌浩と対峙したのは彼女ではなく金色
じゃあ彼女は、譲刃は
(でも、これが譲刃のとは限らないじゃないか)
確信がなければ証拠もない
現場に居合わせた訳でもなければ
本人の口から直接聞いたわけでもない
自分には、まだ何一つわからない
「昌浩、帰るぞ」
食い入るように変色した地面を見詰めている昌浩の肩に
軽いが存在感のある重みが掛かる
気のない返事を寄越した背中を長い尾でやんわりと叩いて
今日はもう帰ることを促した
昌浩は何も言わない
ただ悩むような光を瞳に宿し
後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った