少年陰陽師

□第三十二部
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(今日の夜警は行くべきか行かないべきか)

 ひたすらに墨をすりながら軽く唸る
最近はめまぐるしい日々が続いているせいか
合間合間のささやかな休息が得られていない上
急激な人間関係の変化があり
どうにも精神的な状態の整理が付かず
非常に悩ましい限りである

(でも行かないと修行にならないし、異形が片付かないのは危険だし)

 手を止めることなく思考を巡らせるも
一向に答えは見付からず
零れるのは溜息ばかりで
全く何にも辿り着ける気がしない

(でも出たら出たで何かありそうなんだよね、避けても出くわしそうで怖いし)

 纏まる傾向を見せない頭の中は
自身の纏う雰囲気にしっかりと反映されていたらしく
眉間に縦皺を寄せる晴霞の肩を
誰かの手が親しげに叩く
何か用事でもあるのかと首を巡らせたそこには
総じてあまり印象の良くない部類の笑みを浮かべた先輩方達が
ある種の期待に満ち眼差しでこちらを見ていたので
思わず僅かに身を引いてしまったことは
どうか咎めないで頂きたい

「随分思い悩んでいるようだが、どうされたのだ?」

 どうされたと聞かれてもそう易々と口にできるような話題ではない
いえ、別に、と逃れようと言葉を濁すも
遠慮することはないと顔を近づけてくるのは
日頃から碌に仕事に手を付けず
噂話に花を咲かせることが生き甲斐の先輩の一人である
このようなことに時間を費やす暇があるのなら仕事の一つでも片付ければいいものを
晴霞を品定めするように上から下まで舐めるように見
顔面に広げるのはあからさまな侮蔑のそれ


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