少年陰陽師

□第二十八部
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「何なんだよもっくんも六合も!」

 いきなり二人がいなくなった
と言うよりも置いて行かれたという方が正しいか
一つ向こうの路に探していた感覚を捉えたので
それを二人に伝えたところ
突然六合が顕現し物の怪と頷き合ったと思えば
昌浩を放って行ってしまった

あの虚しさを昌浩は暫く忘れることはできないだろう
苛々しながら物の怪と六合が行ってしまった方角へと向かってみれば
曲がったすぐの路のあちこちに大小様々な気泡が現れ
連鎖的に爆発する

咄嗟に防御手段を取り爆風の威力は大分削いだが
巻き上げられた砂埃が眼に入り込む
涙によって流れた砂埃を無造作に袖で拭えば
明瞭となった視界に映る
探していた背中

「譲刃!」

 気付けば足が勝手に濃紺を追っていた
どこか縺れるような走り方をしている濃紺は
ついこの前追いかけた時より
もっとずっと遅くて

「待ってっ!」

 無我夢中で伸ばした手が濃紺を捉える
止めるために伸ばした腕だ
そのまま自分の方に引き寄せるのは当然で
しかしそれが仇となった

二人が知り合ってからの時間はあまりにも短い
だから知らなかった
結果として見るも鮮やかに無防備な脇腹に一発喰らい
昌浩はみっともなく地面へと膝から崩れ落ちる

「ぁ・・・!」

 急所に入った強烈な衝撃が
肺を塞いだように呼吸を難しくさせ
脇腹を押さえ咳き込ませる

濃紺が漏らした音と砂の擦れる音を拾った数拍の後
辛うじて離さなかった離したくなかった手を振り払われ
物の怪の声が引き留める中
掴み損ねた濃紺は身を翻して遠ざかっていった


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