少年陰陽師

□第二十七部
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 安定もなくたゆたう意識が徐々に浮上する
導かれるように蓋となっている物を上げれば
見覚えのある風景が広がっている
右に左に視線を動かして
暗く日の落ちたこの風景が
自分の住処となっている場所とわかるまで
そう時間は必要なかった
しかし理解した代わりにごく簡単な疑問が出来上がった
自分はいつあそこからここまで移動したのだろう

(あ)

 答えなんてものには至極簡単に辿り着いた
この邸には結界いが張ってある
術者に認められた人物のみが通過を許可される
ちっぽけな小娘が張ったにしてはいやに重厚な結界が

現在結界を張った本人以外に結界を通過できる者は居ない
以前昌浩が入れたのは一時的に許可しただけであって
こちらが彼を招かない限り二度と入れはしないだろう
そしてその二度とはきっと来ないに違いない
というより正直来て欲しくない

彼らは多分気付いてしまった
こちらが作った嘘の裏側を見透かしてしまった
ならば尚更拒絶の意を示さなければなるまい
これ以上こちらの線引きの内に踏み込まれてはたまったものではないから

(また手間かけさせちゃったな)

 柱に寄りかかっている状態のまま眼を閉じ
倒れる前に垣間見えた金色に想いを馳せる
もう思い出せないくらい昔からずっと一緒にいる炎の金色
髪と眸の彩以外に姿形がそっくりそのまま同じの
晴霞のこれ以上ないくらいに大事な大事な人

「・・・逢いたいな」

 閉じていた目を開いておもむろに伸びをし
日課のための準備を始めた


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