少年陰陽師

□第二十四部
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「オンアリキャアラハシャナウ!」

 一見してすぐに危険分子だとわかった異形は
昌浩を視界に入れるなり
狂ったように襲いかかってきた
ぐわっと開いたあぎとに呑み込まれる前に六合が弾いてくれたお陰で
昌浩は今こうして反撃体勢に入ることが出来ている

(まただ!)

 騰蛇に炎を喰らっても
六合に斬りつけられても
昌浩の真言を真正面から叩き付けられても
異形は尚もその瞳を殺気でぎらつかせ
肉食獣の如き歯で息の根を止めんと
脇目もふらず昌浩だけをつけ狙ってくる

「この悪霊を絡め取れ、絡め取り給わずは不動明王の御不覚これに過ぎず!」

 これは幾度めの縛術だろう
何度も向かわせた術は全て効かなかった
跳ね返されて効力を失うのだ
真言も駄目、縛術も駄目、更には結界すらもぶち破る

ならばいかようにすればこの異形の動きは止まるのだ
動きを止めずに退治てみよとでも言うのか
まだ発動させていない術は沢山あるが
所用時間は短く効力のある術を思い出せるかが問題なのである


「麻加連也麻加連、此矢に麻加連!」

 苦し紛れに思い浮かんだ術を投げつける
確実に術は異形に当たり
始めて術による攻撃は成功したものの

「動けるのは何でだよ!」

 異形は怯むそぶりも見せずに
ただひたすらこちらに向かってくる
まるで痛みを感じていないようだ
意志を持ち合わせぬ式のように
異形は昌浩を食い殺そうと接近しては
神将に防がれ弾かれを繰り返していた

「紅蓮!何かいい手ないの!?」

 異形から少しでも距離を稼ごうと走りながら
昌浩は半ばやけに神将に問いかける
動きながらというのもあるのだろう
自然と術の使用には制限が掛けられている

取り敢えず動き回っていれば
異形の方もそこまで手出しは出来ないらしく
昌浩の後を追うに留まっている


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