少年陰陽師

□第二十四部
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 迷う時間も短く方向を定めた昌浩は
いっそ清々しいくらいに路を突き進んでいく
最初は歩みだったのがどんどん早足になって
ついには全力疾走へとなっていた

嫌な予感が警鐘へとなっていることも気に留めず
昌浩はこちらと決めた方向にひた走る
暫しの間走り続け得ていると
何か壁のようなものを突き通った様な感覚があった

瞬間的に足への負荷がふっと増し
耳の傍で「とぷん」という音がして
反射的に背後を振り返ってみるものの
当然其処にはなにも無い

単なる思い違いだったのだろうか
でもこの状況での油断は命と引き替えになりそうなので
これからは剣印を構えたまま慎重に進もうか

(あれ・・・?)

 いざ足を持ち上げて気が付いた
先程の音が聞こえてから
辺りに充満している瘴気が薄くなっている上
身も軽く動きやすくなっていた

しかし代わりとして
昌浩の勘は違うなにかをしきりに伝えてきている
妙に不安を掻き立てるこれに形を与えるならば
“危険”だと断言できよう
足下から這い上がってくる冷たい空気は
これ以上進むことを引き留めているように思える

「・・・オン」

 真言を唱えて自身への加護とする
正直なところ気休めとさほど変わりないが
心理的に言えば全く別で
焦っていた気持ちは幾分か落ち着いた

気を取り直して前方を見据える
徒人には視えず、感じられない瘴気
天性のものと職業柄昌浩には視え
そのなかに求めているものを見つけ出すことが出来る

晴霞の物忌みは今日が最後の筈だ
ならばこれが彼女の用意した最後の課題と言うところか
達成条件は多分晴霞を見つけ出すことであろう

(予想通りになってほしいけど・・・)

 不安が思いとして胸中にわだかまる
昌浩にとって晴霞は大切な知り合いで
互いに傷つけ合う理由もなければ
そこまでする必要も全くありはしない
大体晴霞は明日から出仕しなければならないし
第一に女の子なんだし
やはりこういうことをしたくないのが本音なのである


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