少年陰陽師

□第二十四部
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「東方金剛夜叉明王、西方大威徳夜叉明王、南方茶利夜叉明王、北方降三世夜叉明王、東に青龍、西に玄武、南に朱雀、北に白虎、四方に坐を置く者よ、見我身者、発菩題心、見我名者、断惑修善、聴我説者・・・・・」

 自身の周りも陣で囲み
前に紙製の人型を置いて地面に留める
術に集中できるように音を遮断して気配のみを掴めるようにした
その中央に眼を閉じて胡座をかき唱えるは祝詞か祈りか

否、紡がれる言葉の並びはどちらにも属しはしない
いうなれば集中するための只の詠唱だ
次に行う術には唱えるべき言葉が無い
だからそのための前置き

ふぉん

結んでいた印の形を変え
完全に術に入り込めば
陣が発動する音だけが耳に滑り込み
自身の意識と繋がった事が感じ取れる

この陣は異形の制御を司るもの
この印は異形の負った怪我諸々を身代わりへと移すものだ
やっとの思いで創りあげた蠱毒をみすみす祓わせるわけにはいかない

いずれは遣わねばならぬ時が訪れるであろう
使い魔を持つのも陰陽師としての務め
意思を持たない式なら操ったこともあるが
意思を持つ式を操るのは今回が初めてだから
安全策は講じておいても問題はあるまいよ

ずくん、ずくん、と
更に集中力を尖らせる晴霞の腹の奥底で
密かに血が鼓動を開始した


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