少年陰陽師

□第十八部
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「全く、騒がしいやつじゃわい」

 見えなくなった孫の背中を思い出して苦笑すれば
今朝方帰って行く少女の背中と昌浩の背中が重なった
そう言えば彼女からは親族の話を聞いたことがない
晴明の記憶にも桜宮の苗字はないし
ましてや風の噂に聞いたこともない

譲刃は陰陽師としての力量は足りないものの
実力はしっかり備わっているし
ちゃんとした方向に育って行っている
少々自己犠牲が過ぎるところもあるにはあるが
それは優しさと自分への厳しさから来るものであって
決して悪い所ではないはずだ

彼女のように力の備わっている子には
同じく実力のある親がいるものだが
それとなく聞いてみても全てかわされてしまい
結局聞けずじまいで譲刃は一人帰ってしまった
思えばこの邸にもあっさりと来たものだし
あの子の親は何も言わなかったのだろうか

(少し、気にはなるか)

 晴明が視線を滑らせた先には
六壬式盤が堂々と存在を示していた


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