少年陰陽師

□第十五部
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シャン

「地を荒らすは彼の者にして異なるモノ、其の脚縫いとめ給わずは此処に在り続けし地の力よ!」

 弱らせてから浄化に移ろうかと考えていたが
流石にこの痛みは汗が滲むほど辛く
あまり動くと隠せないくらいに痛みが増しそうだ
多少強行な手段を取ることとなるが
今回は早々に浄化へと段階を移させてもらうことにしよう

唄を詠んですぐ、異形が体勢を崩す
足下の地面がぼこりと大きく凹み
異形の身を地中に引きずり込み始めた
抵抗してみるも一介の異形の力が
地の力に勝ることはなく
抗うことを続けながらも地に引きずり込まれていく

引きずられまいと暴れる異形に
鈴の補助として唄を制御するために結んでいる剣印が
僅かな痺れを帯び始めた
異形の抵抗が予想以上に強いらしい
かけている力が跳ね返されるかもしれないという恐さに
ぐっと剣印に霊力を込めて耐える

シャン

「大地の気は内包の気にして浄の気、全てを包み全てに還す浄化の気!」

 異形が完全に地に沈んだ瞬間を見計らって紡がれた言葉は
最後まで暴れてはいたが
地に沈められたことにより
一切の身動きがとれなくなった異形の身に絡まって
文字通りその全てを大地へ還元させようとする

強引にことを運んだ晴霞の息は酷く荒くなっていた
痛みは腰を通り越して足全体にまで及んでおり
今にも膝が砕けてへたりこんでしまいそうだ
しかし今は集中しなければならない
少しでも集中を欠いてしまったのならば
行く末は何においても未熟なこの目にもありありと見えてしまう

は、と堪えているものを吐息に混ぜこんで柔げようとするも意味を成さない
ずきずきと鼓動と同じ様に波を作る痛みは
血液と共に体内を循環するようで
晴霞の集中力と意識を削ごうとしてくれる
ともすれば手のひらから落ちていきそうな意識を
決して離すまいと握り締めて
晴霞は一向に安定する見込みのない呼吸を繰り返す


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