少年陰陽師

□第十三部
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 安倍邸の塀に登った影が
きょろきょろと邸の中を見回す

「・・・よし」

 予想通り彰子は部屋で大人しく昌浩を待っているようだ
自分が出掛けていることがばれてしまわないうちに部屋に戻らなければ
後々面倒なことになりそうである
勿論面倒ごとはごめんこうむりたい

両腕にぐっと力を込めて晴霞は塀の上へと体を持ち上げる
なるべく無音で邸の庭に降り立つと
現在自分に宛がわれている部屋へと向かう

晴霞に宛がわれている部屋は昌浩の部屋の隣にある
確か昌浩の兄のどちらかが使っていた部屋だとか何とか
いつでも使えるように掃除はまめにしていたらしく
晴霞が部屋にいきなり入ったときも、埃は積もっておらず
綺麗な状態だったのを覚えている

(次の式はどれにすれば効果が・・・)

 考え事をしながら簀子へと上がり
部屋の中を見回して誰もいないことを確認すると
晴霞の足は自然と動きを止めた
部屋の中が明るい上に光が外まで漏れてきている

今部屋は無人で、灯台の火も消してから邸を抜け出した筈
では何故、現在仮の主がいない部屋から
こうして明かりが漏れてきているのか

誰かがいるなんて考えたくない
いてほしくない人物だけが頭を過ぎるからだ
確かに彼女は今暇だろうし
神将がいるからといって大人しくしているとは考えにくい

でも、だからといって
それをそのまま現状に結び付けたくはない
なんだか、とってもまずい気がするからである
付け足す事項があるといえば、晴霞だって陰陽師の端くれなのである
その勘が当たる確立もやっぱり常人のそれよりも高いわけで・・・

やっぱり止めよう
無駄に考えを巡らせたっていらぬ心配をするだけだ
きっと灯台の火を消し忘れただけ
部屋に入ってみれば誰もいないことが証明される!


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