少年陰陽師

□第十三部
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 ・・・筈だったんだがなぁ

「お帰りなさい譲刃、何処に行ってたの?」

 簀子から部屋に入った晴霞の予感は見事的を射ていた
部屋にはしっかりと人が座っていたのだ
それも三人、彰子と太陰と玄武である

しかも彰子は晴霞にお帰りなさいと
何処に出かけていたのかを尋ねる言葉をかけてきた
そばにいる玄武は表情ひとつ変えていないし
太陰に至ってはそっぽを向いている
晴霞も随分と神将達に嫌われているらしい

「部屋にきてみたら誰もいないから吃驚したのよ、ねぇ何処に行ってたの?」

 彰子の言葉の発し方には断ることができないような感覚がある
不覚にも晴霞は彰子のそれに呑まれてしまった
正直なことを言おうにも言ってはならず
かといって他の言葉が出てくるわけでもない

明らかに狼狽した様子の晴霞に彰子はまだ微笑みかけている
どうやら答えがあるまでそのままでいるつもりらしい
これは流石に逃げようがない
誰かに助けを求めようかとも思ってみたが
よくよく思わなくとも晴霞が助けを求められる人なんていないのだ

みるみるうちに眉の下がる晴霞に
彰子がどうしたのだろうと思い立ち上がろうとしたとき
晴霞の横に背の高い誰かが現れた

「こいつは邸の様子を見に行っただけだ、そう責めてやるな」

 伏せかけていた顔を上げてみれば
横に立ったのは勾陣だった
いきなり現れたから吃驚したが
穏行していたのをやめて顕現したのなら得心が行く
冷えた視線をすいと流して晴霞を一瞥すると
勾陣は彰子のところに歩いた

何やら昼間には暇がないとか
夜にある晴明の使いついでがどうとか
上手い具合に大事なことは隠しこんで
しかし嘘は吐かずに彰子に説明しているらしい


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