少年陰陽師

□第九部
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「譲刃!」

 駆け寄ってきた昌浩が懐に手を差し込むのを、腕を掴んで制止する

「大丈夫、いつものことだから」

 嫌な汗を額に浮かべる晴霞は痛みを堪えながらも口端を上げ
おもむろに握りこんでいた鈴を振る

シャン

「此処に在りしは血の穢れ、天より見降ろし蘇魔の王よ、汝が力で穢れを滅せよ」

 呪を唱え終わると
腹の傷口が仄かな光に包まれる

「ほら、傷口は塞がったし、血の汚れも綺麗になったでしょう?」

 光が萎んでいってすっかり消えたあと、傷口があった部分を軽く叩けば
険しかった昌浩の表情が緩む

「わ、本当だ。凄いね、もっくん」

 酷かった傷が跡形もなく完治しているのを確認した昌浩が
隣にいる物の怪を顧みて同意を求めた

「・・・まぁ、中々に便利そうだな、まだ半端そうではあるが」

 感心したのかそうじゃないのか
どっちつかずの態度を取りながらも
物の怪は治った傷口を覗き込む

「さて、これで依頼は終了。皆のところに行かないとね」

 やれやれといった様子で立ち上がった晴霞は
浴衣の裾をはたくと
昌浩と物の怪に背を向けた

「じゃあね二人とも」

 二人に背を向け、後ろ手を振った晴霞は
すぐ近くにあった角を曲がった


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