少年陰陽師

□第九部
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(・・・痛い)

 肩が、脇腹が、熱を伴って痛み出す

(明日も出仕しないと・・・)

 ふらふらと覚束ない足取りで
晴霞は雑鬼達の待つ群生へと急ぐ

「孫ー!」

 雑鬼達の声に晴霞は落としていた顔を上げた
群生の方向からよく話す三匹が飛び跳ねて来ていた

「化け物は!?影は!?」

「本当に退治てくれたのか!?」

「なぁ!どうなんだ!?」

 雑鬼達の期待の籠った眼差しに
晴霞は無理をして作った笑顔で頷く

「やったあ!」

「これで右京に行ける!」

「ありがとな!孫!」

「それと孫の式!」

 最後の雑鬼の言葉に
晴霞の顔がびしりと強張った

「・・・・・もっくん、居るの?」

 名を呼べば背後に気配が現れた
紛う事なき、十二神将最強の気配が

「昌浩に頼まれでもした?」

 僅かに、ほんの僅かにだけ
物の怪の耳が風にそよいだように動く
どうやら図星らしい

「傷なら跡も無いよ、穢れもないし、痛まない」

 きっと、もうばれてしまっているのだろう
でも物の怪には早く帰って欲しかった
これ以上雑鬼達の前で演技の出来る保証が無かったからだ
実際、脇腹はかなりの痛みを孕んでいる
本当はこうして立っていられないくらいに

「そうか、本人の要望ならば仕方ない。帰るとしよう」

 物の怪がいともあっさりと背を向ける

「明日も必ず出仕しろよ、あれが心配するからな」

 溜息と共にそう残して
物の怪は四人の視界から姿を消した


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