少年陰陽師

□第九部
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「・・・・・ねぇもっくん、譲刃が自分の邸に帰るまで、こっそり見といてくれない?」

 晴霞が角を曲がったことでの姿が完全に見えなくなった頃
唐突に昌浩が言った

「何故だ?」

 不思議に思った物の怪が昌浩の顔を仰いだところ
不安そうな顔と目があった

「何か、我慢してるみたいだと思ったんだ、だからお願い」

 顔の前で両手を合わせて
昌浩は物の怪に頼み込む

(ここでお願いとくるか)

 昌浩の言い方に、物の怪はどことなく呆れた
「命令」ではなく「お願い」では断るに断れないではないか
その上断ってみようものなら
昌浩は本気で懇願してくることだろう

「・・・全く、面倒な孫だ」

 どうしてこんなにも、あの祖父と似ているのだろうか

「何か言った?」

 当の本人にしては
物の怪の苦労は何処吹く風なのだろうか

「いいや何でもない。頼まれてやるから、お前はさっさと帰れよ」

 ひらりと塀の上に跳び乗り
譲刃の行った方角へと足を向けると
後ろから昌浩のありがとうと言う声が
聞こえたような、聞こえなかったような
そんな気がした


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