少年陰陽師

□第六部
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(本当にあの人が直丁してたんだ)

 帰る前に寄った塗籠で遭遇した安倍昌浩は
思いの他戸惑っていた様子だった
無理も無い、元々女が居る筈の無い陰陽寮に
昨夜遭遇した少女が居たのだから
適当に誤魔化して逃げてきたが
あの反応では確実にばれてしまっているだろう

(・・・またか)

 今朝とは違う気配が居ることに
晴霞は気が付いた

(同じ術は効かないだろうし・・・うーん・・・)

 そう呟きつつ
晴霞は鈴と呪符を取り出す

 シャン

「夢幻の迷い灯に照らされ、標的を見失え」

 呪を口の中で唱え呪符を捨て走り出すと
呪符は目が眩む程の閃光を放ち
勢い良く燃え上がった

「・・・良し、今度も大丈夫」

 安堵した晴霞は
足早にその場を離れる

(・・・あ、今邸に食べれる物何も無いんだった)

 邸に着いた晴霞は財布の中身を確認すると
その中身の無さに落胆した

(次に収入が入るまで大部間がある・・・、反物ってやっぱり高いなあ、暫く野菜で我慢しないと)

 少し前新しい浴衣を誂えようと藍の反物を買ったが
市の中でも安かったと言えどやはり値は張っていた

(とりあえず野菜を買おう、そして細々と食べよう)

 小さな荷車を引きながら
晴霞は市へと向かう

(人少なくて良かった、荷車が邪魔にならなくて済む)

 この時間は人もまばらで
僅かだが売手への値切りが効く
この時間帯に来ないと晴霞は破綻してしまうことだろう
それだけ現在の晴霞の位は低く
生活には難を強いられる


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