少年陰陽師

□第五部
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(・・・ここは?)

 果てのない闇の中に
昌浩は一人で立っていた

(・・・夢?)

 辺りを見回していると
不意に肩を叩かれた

「うわっ!」

「ひゃあっ!」

 昌浩が思わず叫んでしまうと
もう一つ高い声が重なった

「びっ、くりしたぁ・・・」

 背後に現れたのは
先刻の少女と同じ気配だ

「振り向かないで!今見せられるような格好じゃないから!」

 確かめようと思い振り向こうとしたら
慌てた様子でそれを阻まれた

「・・・どうして、ここに?」

 振り向きたいのに振り向けず
昌浩は逡巡しながらもとりあえず振り向くことをやめ
沈黙を避けるために質問を探した

「貴方に、謝りたかったから」

 昌浩の背中に軽い重みがかかる
少女が背を合わせてきたのだろう 

「さっきは逃げてごめんなさい、いきなりだったから、つい」

 布越しに伝わってくる少女の温もりに
昌浩は何故か安堵する

「別に、気にしてないから大丈夫だよ」

 昌浩がそう答えると
少女は安心したように小さくそっかと呟いた

「一つ訊いていい?」

 本当に訊きたかったことを聞くために
昌浩は前置きとして了承を求めてみる

「なぁに?」

 すると少女は
少し微睡んでいるような声音を寄越してきた


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