少年陰陽師

□第三部
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「さてと、帰ろうもっくん」
    
 終業の鐘鼓が鳴り
片づけを終えた昌浩は立ち上がる

「ん〜?やっと終わったのか?晴明の孫」

 物の怪は、伸びをして欠伸をして
それからゆっくりと立ち上がる

「孫言うな、もっくんは横で寝てただけじゃないか」

 物の怪に文句を言い
先輩達に挨拶をしながら内裏を出た

「昌浩殿!」

 不意に呼ばれた声に立ち止まった昌浩は
物の怪の尾を踏んで暴れられないようにした

「止めるな昌浩!足をどけろ!」

 声の主が解った物の怪は
途端に暴れ出した

「どうしました?敏次殿」

 足下の物の怪が暴れ出すが
昌浩は気にも留めずに
駆けてきた敏次を見上げる

「一つ尋ねたいことがあるのだが」

 敏次の問いに
昌浩は少し首を傾げる

「昌浩殿は桜宮譲刃という直丁を存じているか?」

 桜宮?、と
昌浩は問い返す

「ああ、昌浩殿と同い歳の直丁だ。存じていないのか?」

 敏次への答え代わりに
昌浩は浅く頷く

「彼はよく塗籠に居るから、一度会ってみるといい」

「わかりました、会ってみます」

 昌浩の答えに
敏次は満足げに笑った

「では私はこれで」

「お疲れ様でした」

 去っていく敏次を見送った昌浩は
物の怪を宥めながら
安倍の邸へと足を踏み出した


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