少年陰陽師
□第三部
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(今度は、見付かる訳にはいかないかな?)
「・・・殿・・・譲刃殿!」
成親に肩を掴まれて
晴霞は我に返った
「お疲れかな?早く帰って休んだ方が良い」
心配そうな成親の瞳が
晴霞を覗き込んでいた
「は・・・はい、成親様がそう仰るなら・・・」
まだ驚きの退かない晴霞は
慌てて書物を片付け始める
「そうそう、うちの末弟は、夜中に出歩く様な危ない事はしないと思うが、それがなにか?」
先程よりも爽やかな笑顔の成親に
晴霞は嘘を感じ取った
「何でもありません、すみません手間を取らせてしまって」
書物を片付け終え
塗籠の扉を施錠する
「いや、構わない。・・・ところで譲刃殿」
成親が顎に手を当て
晴霞を烏帽子の先から足先まで
ゆっくりと見定める
「・・・なんでしょう?」
その仕草にちょっと身を退いて
晴霞は返事をする
すると成親は
不意に意味有気な笑みを作った
「女性にして直衣が似合い、しかもこんな男だらけの場所で直丁を勤め、その上中々に可愛いとは。いやはや面白いな、譲刃殿は」
(!)
「ではまた」
面食らう晴霞をそのままに
成親は笑いながら去っていく
晴霞はその背を茫然と見送りながら
全身の血の気が引いていくのを感じていた
「・・・ばれてる」
女性らしい振る舞いをすまい、と
日々用心してきた筈だったのだが
「安倍晴明の孫・・・恐るべし」
呟いた晴霞は
早々に帰宅するため、内裏の出口へと急いだ