浅い湖

□別れと出会い
1ページ/1ページ




「さようなら」
15年間生きてきて初めて出来た最愛の人に告げた別れの言葉

彼は、




死んだ


居眠り運転していた車にひかれそうになった私を
庇って彼がかわりにひかれて死んだ

以来、私は車と男性恐怖になった。


大切な人を失ったあの気持ちはもう味わいたくない

だから、私は彼を奪った車を嫌い
もう、恋をしないと決めた
そして、これを最後の恋と決めた
だから、恋愛とも「さようなら」


それから、幾月の年月が過ぎて、当時中3だった私は
今は、高3になっていた

あの日から私は勉強にだけ集中して周りを気にせずに過ごしてきた
だから、高校は立海大付属高校に外部入学した

さすがに、有名校なだけあって入学試験は難しかったけど
なんとか合格し今は、そこに通っている。

家や中学から離れたここに通っているのは、恐怖が染み付いているから
彼を亡くしたあの場所から離れたかったし
友達も失いたくないと思ってのことだった

残り少ない高校生活もいつも通り休み時間に図書室に行っている

「やぁ、今日も来たんだ」

「幸村君、ええ、勉強だけが取り柄だから」


そう、私は彼を亡くした日から勉強だけをしてきた
周りからは「ガリ勉」とか「本の虫」などと呼ばれる様になった

「俺は調べもの。君は勉強しに?」

「まぁね」

私は、幸村君が苦手だ。
幸村君は彼にそっくりだから
彼を思い出して悲しくなる。

「あ、私そろそろ行かないといけないから、またね」

向かいの席に座った幸村君にそう告げてその場を去った

私は、トイレに向かい個室に入って涙を流した
やはり、彼の事を思い出してしまったから



しばらくしてチャイムが鳴ったため、その場を仕方なく離れた。

放課後になって、帰り支度を始めたところに息をあげた幸村君が来た。

「ハァ、ハァ、やっと見つけた」

「どうしたの?」

「探していたんだ、キミを」

「なんで?」

「まぁ、いいから、いいから。ちょっと着いてきてよ」

幸村君はそういいながら、私の腕を引っ張って屋上庭園に連れて行った

「わぁ〜、キレ〜。そういえば、幸村君だよね。ここの花の世話してるの」

「うん、ガーデニングは趣味だし、花とか好きだからね」

「それで?なんで私を連れて来たの?」

「俺の好きな場所で好きな人に告白しておきたかったんだ。
もうすぐ、卒業だしさ」

「へぇ〜」

「好きです、俺と付き合ってもらえないかな」

「・・・ごめん、私、怖いの男の人が」

「そっか、俺に治すこと出来ないかな」

「・・・分からない、でも、試して見たい!いい?」

「えっ?」

「もう、逃げ疲れちゃったんだ」

「フフッ、いいよ」

すっと差し伸べられた手にそっと自分の手を重ねて校舎へと向かって行った。

終わり


オマケ
(図書室に毎日通っていたの、君に合うためだったんだ。
まぁ、そんなこと口が裂けても言わないけどね)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ