長編小説 〜第二章〜
□第二話 整頓!
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全ての授業を終えたある日。
律「戒、部活行こうぜ〜!」
戒「そうだな、行くか。」
退屈(あるいは有意義)な授業から開放された学生達はこれから、学生だから出来る自らを充実にする時間を謳歌する。
人によってはもう一仕事、または補習という怠惰の報いを受ける者もいるかもしれない。
戒と律達は前者だ、軽音部で充実な時間を過ごすだろう。
戒「…ってムギ、今日日直だったか?」
紬「ううん、本当は唯ちゃんなんだけど。」
黒板の字を消している最中の紬。
紬が指し示す方向を見ると、
唯「スピ〜、スピ〜…」
和「何度も起こそうとしてるんだけど…」
戒「よく堂々と…」
気持ちよくお昼寝タイムな唯の姿があった。
一番後ろの席は、眠るには格好の場と言える。
眠気に耐える勤勉な戒とは真逆だった。
和「ほ〜ら唯、起きて。」
律「おい唯〜起きろ〜!練習だぞ〜!ライブだぞ〜!ギターだぞ〜!」
やりとりの中、戒達五人は共通した絶対な口実が浮かんだ。
戒・律・澪・紬・和「唯(ちゃん)、ケーキだぞ〜。」
そういうと唯はやっと反応を見せた。
唯「むぅ……ない、嘘つき…。」
こうして唯はもう一度眠りについた。
律「ダメだ!ムギ、本物のケーキを!」
紬「ラジャー!」
さわ子「田井中さ〜ん。」
すると軽音部顧問たるさわ子が教室に入ってきた。
表向きは『おしとやかな先生』だ。モードを切り替えている。
さわ子「前に貸した着ぐるみ返してくれない?演劇部の子達が使うみたいなの。」
…とりあえず新入生を震撼させた動物の着ぐるみを演劇部が使うという問題は置いとく。
律「あぁ、それなら部室の物置に…」
そう言って部室まで案内した先には、
さわ子「…なにこれ。」
戒「いつの間に、こんなに物が増えとる…。」
担任、顧問、絶句。
律「ええと、着ぐるみでしたら…(グイッ)ここに!」
律が着ぐるみを引っ張った瞬間。
グラグラ…ガラガッシャーン!!
高く積み上げられた荷物の山が、雪崩と化して律を襲う。
律「う、うわあぁぁぁ!」
戒「りぃつぅぅぅぅぅ!!」
律が危ないと本能で悟った戒は、
律を守るべく、律の身代わりとなり、雪崩の餌食に。
そして倉庫から大きく鈍い衝撃音が響く。