長編小説 〜第二章〜

□第一話 高3!
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4月。

新学期の初めの朝。


戒「今年も立派に咲いてるなぁ、桜…。」


学校へ向かう最中、戒は呟いた。

桜は戒を暖かく迎えるかのように咲いていた。

また一年、『仲間』のもとへ導くようにも。

また『一年』、

学校生活最後となるこの『一年』。

そう、もう一度この桜を見る頃には…


ガチャッ

律「おっはよ!戒!」ギュッ

戒「おはよ、律。」


田井中 律。

活発的で、戒の最も大切に想う彼女だ。

学校へ向かう前に、ほとんど日課として律の家まで迎えに来ている。

理由は『事件』の予防策で…

戒は自らの過去が原因で律を傷つけ、下手をすれば命に関わりかねない『事件』を起こしてしまった。

しかし、律は戒を拒むことはしなかった。

律も同様に、戒が大切だったから、

そのおかげで、戒は闇を捨て、心境を奥底から変えることができた。

その信頼関係が、いまの抱擁から見てわかる。


律「いよいよだな!三年生!」

戒「また同じクラスになれたらいいな。」

律「ああ!そういやクラス替えもあった!」

戒「おっ、あれは・・・」

律「おーい、澪〜!」


見覚えのある長い黒髪の少女を見つけ、そのもとに駆け出す。


律「おはよー澪君!朝から元気しとるかね!」

澪「誰のつもりなんだ、お前は。」


秋山 澪。

律の幼なじみで、対象的にあまり活発とは言えない少女。

しかし彼女も戒同様、律がいたおかげで変わることができたのだ。

先ほどの軽い漫才のように二人のやりとりを見ると、改めて長い月日を共にして培われた、対象的な性格を越えた信頼が見受けられた。

それが戒の目標だったりする。

歩いていると、またもや何かを発見する。


律「前方より人間一人を発見!戒!」

戒「データ照合、目標の確認、『中野 梓』と断定。」

澪「戒もよく乗れるな、その設定…。」


『突撃!』と言って律は背後から急速に目標へ迫る。


律「捕まえたぞ〜、梓〜!」ガシッ

梓「にゃっ!?」

戒「おはよ。」

澪「おはよう、梓。」

梓「あ、おはようございます、戒さん、澪先輩!ついでに律先輩も。」

律「ほう、この私をおまけ扱いとは…いい度胸だな!」ギューッ

梓「うおぉ…。」


言われた律は黙っていられず、そのままの体制からチョークスリーパーで梓を締め上げる。

中野 梓。

練習に真面目な、軽音部唯一の後輩。

ぞんざいな扱いをしてるようにも見えるが、

これでも律を先輩として見ているのは確か。

軽音部に馴染めたというわけだ。

その他のメンバーにも言えるが、たった一年でこれだけの関係になる以上、

軽音部には特別な何かがあるのかもしれない。
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