また、君に恋してる

□Z
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何の考えも纏まらないまま日は流れ、気がつけば年が明けていた。
世の中がクリスマス、年末、正月と盛り上がるのを横目で見ながら、昨年までみたいに仲間と盛り上がる気も起きずただ淡々と送る日々。






何かをしたい…


全速力で走りだしたい程、大声で叫びだしたい程、心は沸き上がる焦燥感にじれじれになっているのに、



何をしていいのかが分からない…



思う事は、……願う事はただ一つ。


なのに、その為に


どこに手を伸ばせばいいのか?
どこに向かって行けばいいのか?


分からず立ち尽くす。




「迷子の子犬…みたいだね」



色づく街、喧騒の街で一人、空を見上げて、総司は呟いた。
くくっと一人忍び笑いと漏らしてから、肩を竦めた。


子犬…と言うより、獰猛な捨て犬かな?


自分の周りではしゃぐ、通りすがりの人達を羨むつもりはないが、それでも鮮やかな街が鬱陶しいと、楽しげな人々が煩いと思う自分がいて…

がぅぅぅと、周りに噛みつきそうな己の負の塊を抑えるように、総司は首に巻いたマフラーで口元を覆った。






どうしようもない想いを抱えたまま、総司はそれでも、それまでと変わらぬ生活を送るしかなかった。













その日、ゼミのレポート提出を二日後に控えて、最終のまとめようと大学の図書館に詰めていていた総司は、レポート用紙や辞書、参考書籍、筆記用具を広げた自分の前の席に、座ろうとする人影に顔を上げた。
そこには大きなトートバッグを肩にかけた勝気な瞳をした少女が。

「総司先輩、ここいいですよね?」
「だめだ…って言っても座るんでしょ?」
「その通りです」

見知った顔がニッコリと笑うのを肩を竦めて、持っていたペンをノートの上に転がした。
それを了承と取った少女は、もう一度ニッコリと笑うと隣の席に荷物を置いて、総司の前に腰かけた。
鞄から取り出したのは、英文学関連の書籍とノート、それと数冊の剣道の雑誌。
その表紙に大学選手権の文字が見えて、総司の視線がその雑誌から自分へ向くのを待ってから、その雑誌を総司に示した。
『顧問の先生から渡してくれって』と手渡された雑誌をペラペラとめくっていく総司の手元を覗きこむ少女



「レポートですか?」
「見ての通りだよ」
「総司先輩が勉強してるのって、あまり見た事無いから新鮮ですよね」


総司が不機嫌そうに眉を寄せるのを見て、クスクスと笑う少女にそう呼ばれた少女はクスクスと笑みを零した。
屈託なく笑い続ける少女に、総司はやや呆れ気味な表情になって、眉を下げた。


「それってイヤミなわけ?」












千鶴ちゃん……?












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