時飛ばしの果てに…【玲瓏の季】

□第四十八章《 遭 遇 =武蔵野= 》
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= 総司 =


「楓……?」

名前を呼ばれた気がして、ハッと我に返った。
一瞬、自分がどこにいるのかもわからなくて、総司はぎこちなく視線を彷徨わせた。
そこは自分にあてがわれた部屋。

そうか…
近藤さんが出立した後、ずっと部屋に籠ってたのか…

薄っすらとしか浮かばない状況を把握しようと総司は額に手を当てて目を瞑った。

病状が悪化して、参戦する事が出来ない…
それはある程度、覚悟はしていたことだったのに…、いざそれが現実になると、やはり近藤の役に立てない事が悔しい。

どの位ぼんやりしていたのだろう?
楓がいない事にも気が付かなかったなんて…
僕を呼ぶ声が聞こえた気がしたんだけど、どこにいるんだろう?

近くに楓の気配が感じられないせいか、胸騒ぎがグルグルと胸の内で回り始める。

「楓?」

部屋を出てもう一度声をあげる。
だが、どれだけ待っても返って来ない。
『はーい』という元気な声が…聞こえない。

「楓!!」

納まる事のない胸騒ぎに吐き気がした。
 
 
 
 
※※※※※※※※※※



「あぁ、あの人なら村奥の森の川に水を汲みに行ったよ」
「森の…?」

楓の行方を尋ねた家人の言葉に総司は絶句した。

森へ一人で行った?
まさか、そこで何かあったんじゃ…

胸騒ぎが冷たい恐怖へと変わり、腹の底に積み上がる。
森へ行かなきゃ…
不意に浮かんだ血まみれの楓の姿に激しく頭を振って、総司は踵を返した。

刀を取りに行かなきゃ…

唇を噛みしめ、部屋へ戻ろうとした時、

「総司!!」

総司の名を呼ぶ、楓ではない…男の声。
だが、それは聞き覚えのあるその声で…

「総司!!楓が!!」

聞こえたその名に弾かれた様に振り向いた総司は土間に立ち、肩で大きく息をしているその男を見て驚きの声をあげた。

「平助!?」
 
 
 


第四十八章 《 遭 遇 =武蔵野= 》

 
 
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