ワンピース

□戦場にて4
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「ゼハハハハハハ!!久しいな!…死に目に会えそうでよかったぜ、オヤジィ!!」



戦場のざわめきと、聞こえた声に、エースは足を止めた。

「…アイツ!!」

ティーチと黒ひげ海賊団―――その姿を見て、腹の底から怒りが込み上げる。
サッチを傷つけ、オヤジを裏切り、揚げ句の果てに『死に目』だと!?

「エースさん、止まっちゃいかん!」
ジンベエが叫ぶ。
「エース、行こう!」
ルフィに腕を引かれる―――が、その力がふいに弱くなり、エースは弟を振り返る。

これでもかと目を見開いているルフィの視線の先には、一人の少女。

「ウミ!?」

叫んだのは、ルフィだ。
ティーチの近く、建物の上にウミがいる。避難せずに、ずっとそこにいたのだ。

「何やってんだよ、アイツら!?」
ウミも、ジジイも海軍どもも。
あんなひ弱な女、簡単に殺されてしまう。こんなに離れてしまっては、エース達にはどうこう出来ない。
「…致し方ない。ウミならガープ中将がおる。エースさん、ルフィ君、行くぞ!」
「いやだ!」
「ルフィ?」
さっきはエースを止めたルフィが、今度は戻ろうとしている。

「二度も守れないなんてゴメンだ!!」

二度…?

「いかん!そんな体では…何も出来ずに無駄死にじゃ!」
「いやだ!ウミは弱いんだ!木登りも出来ねェくらい、弱いんだぞ!!」
「エースさん、ルフィ君を止めてくれ!」
「あ、あぁ…」
ルフィの様子に、エースはハッと我に返る。
「ウミ〜!!」
叫ぶルフィを、半ば引きずるようにして連れていく。たいした抵抗も出来ないくらい、ルフィの体力は限界だ。
そのおかげで、エースは少し冷静になれた。





何やら向かい合っているウミとティーチ達。

海兵達が動く。
オヤジもセンゴクと目を見合わせて頷いている。
「…ルフィ、見ろ!海軍が動いてる。ウミはジジイに任せろ」
言い聞かせるように、何とかルフィを逃がそうと、先ほどまでとは逆にエースはルフィを説得する状態だ。





ティーチの闇が見えた時、まずいとエースも足を止めてしまう。

けれど、ウミに届いた闇は、すぐに消えた。

何をしたんだ?
遠目でもティーチの慌てぶりがよくわかる。



次いで、拳銃を向けられているのが見えたが、サッチが割って入った。
ちらりとウミに振り返ったサッチは、すぐにティーチに向かったが―――



「またぁアアア〜!?落〜ち〜るゥ〜〜〜!!」



一太刀振るおうとすると同時に、サッチはウミに突き落とされた。

「………何やってんだよ!サッチのアホは!!」
「違う」
「ルフィ?」
「ウミは…あのおっさんを助けたんだ」

エースとジンベエ、それぞれに腕を引っ張られているルフィの言葉に、驚くと同時に納得した。



ウミは確かに、生かそうとしている―――





「ゼハハハハハハハ!!おめェ、せっかく逃げられるチャンスだったのに、ふいにしちまったなァ!」



ウミが危ない事態に変わりはない。

「エース!ジンベエ!放せよ!!ウミが危ないんだ!」
「そうはいかん!今は逃げるんじゃ!!」
「…大丈夫だ。ジジイがいるし、オヤジだって一般人を死なせたりしねェ!」

暴れるルフィを抑えようとしたところで、ふいに大きな影がかかった。

「エースぐん…はやぐ逃げるんだァ!!」
「オーズ!?」
巨体を引きずりながら、這ってきたオーズ。
その大きな手が、エースと、もがくルフィと、それを押さえるジンベエを、掬い上げる。
「…そうじゃ!海に投げてくれ!海に出ればわしの土俵じゃ!!」
「わがったァ!」

ジンベエの言葉通りに、オーズは躊躇なく三人を投げた。



ポイッ、と―――



「うおぉ!?」
「ウミ〜〜〜!」
「うまく落ちれば良いが…」



ルフィの麦わら帽子が、戦場に飛んでいった。



空中で見えたのは―――










センゴクの衝撃波と、オヤジの攻撃。

…ウミごと!?



「どわー!何か飛んできたァ!!」

宙でぶつかって受け止められた相手は、赤鼻のバギー。

「うおーっ!!火拳にジンベエに麦わらァ!?どういう経緯で空を飛んで来やがったんだ、お前ら!」
驚かれるが、それどころではない。

「バギー、ウミんとこ連れてってくれ!」
「赤鼻のォ、沖に出てくれ!」
「どっちだよ!?…だれが赤っ鼻じゃクラァ!」

ウミはどうなった?



「―――砂嵐!」



小さな体が飛ばされて、バーソロミュー・くまに受け止められるのが見えた。


 
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