ワンピース
□戦場にて4
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後悔―――
長い海兵人生において、そんなものは山ほどあった。
後悔をするくらいなら動かなければならないと、センゴクは培ってきた経験から知っている。
「ゼハハハハハハ!!久しいな!…死に目に会えそうでよかったぜ、オヤジィ!!」
処刑台には、黒ひげティーチ。それにシリュウや囚人まで。
「センゴク元帥!お伝えするチャンスがなかったのですが……先程再び正義の門が開き、認証のない軍艦が一隻通ったと報告が」
海兵の報告に、ギリリと歯を食いしばる。
「そいつらの解放が目的だったのか!!」
「ゼハハハハ!そうとも。初めからそれだけだ。そしてこれが全て!今にわかる………ん?」
何としても捕まえねばと考えたところで、黒ひげの目線が横にそれた。
「何だァ…?おまえ、海兵か?」
!?
衝撃を受けたのは、センゴクだけではない。
「ウミ!?」
ガープが叫ぶ。
海兵達も、口々に騒ぐ。
「ウミさんが…危ない!」
「避難してなかったのか!?」
黒ひげ達のすぐ隣に、少女がいる。
確かに彼女は処刑台にいた。端に下がると言っただけで、ずっとそこにいたのだ。
パシフィスタを探す。
しかしすべてが前線に出ているため、少女の傍には誰もいない。
この状況は、全て彼女の言う通りではないか!
………何故、笑っている?
何とかせねばと焦る思いと、うかつに手を出せば少女も危ないという思い。
ちらりとこちらを見下ろした少女に、強く睨まれた。
「…?」
何だ?
今の目線は、何の意か?
ただ曖昧に笑う少女に、センゴクは何かと考える。この状況をどうするか―――
「度胸だけは祖父譲り………確か、一切戦えないお嬢さんだと聞いています。避難していないという事は、何かしら力があるんでしょうか?」
「…いいえ。あいにく私には、普通の、一般人の体力しか、ないですね」
彼女は普段、こん話し方はしない。
もとより大人しいが、常よりもゆっくりと、小さい声だ。
「でも………お話くらいなら、出来ますよ」
―――話?
黒ひげが少女に警戒を向けた時点で、はっきりと気付く。
これは、時間稼ぎだ。
話の内容に気になる点はあるが、センゴクは海兵達にそっと指示を出した。
ゆっくりと動いていく兵士達。
「てめェ………何者だ?」
「海軍中将モンキー・D・ガープの孫です。ウミと言います」
「ゼハハハハハハハ!おめェ、度胸だけは認めてやる。だがなァ………闇穴道!!」
黒ひげのまわりに現れた闇が、少女に向かう。
これまでか。
黒ひげ達を包囲するにはまだ時間が欲しいが、これ以上は少女が危ない。
「何の能力者か知らねェが、ヤミヤミの実の前ではすべて無駄!ゼハハハ、ハ…?」
彼女を能力者と勘違いしているのか。
確かにガープの孫なら、そう思われてもおかしくない。
焦りは、緩く笑って闇を払った少女を見て、少しだけ落ち着いた。
「闇が…消えた!?」
―――海楼石だ。
「何故だ!?てめェ何しやがった!!」
うろたえる黒ひげに、センゴクはさらに包囲を詰めていった。
「ホホホ、それじゃあこれはどうですか?」
向けられた拳銃に、ここが限界かと、攻撃の構え―――
「おや、物理的なものには弱いようですね。ロギアではなくパラミシアですか?」
「おまえら、やっちま―」
「ティーチィ!!」
割って入った海賊に、留まる。
黒ひげの危険さを唯一警告したのは、あの少女―――戦えもしない少女が、戦況を変えようとしている。
「………白ひげ」
「あの娘はガープの孫でも一般人…だったよなァ?どうも普通とは違うようだが」
話す前に、先を言われる。
付き合いの長さ故か、センゴクの意図は言葉なしに伝わった。