ワンピース
□戦場にて3
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ほんのわずかに、サカズキさんのマグマから逃れたように見えたルフィとエース。
ウミのいる位置からでは、はっきりと見えない。
「―――エースぐん!!」
戦場を大きく横切った影は、ズウゥンッと土煙を上げて、サカズキさん目掛けて落ちた。
「包囲壁か!チィ…!!」
マグマを吹き飛ばしたのは、包囲壁だった物―――オーズが投げたのだ。
「エースぐん、早ぐ走れェ!」
見えない壁の向こう。
オーズの叫びに、二人は無事かと検討を付ける。
しかしまだ、逃げ切れたわけではない。
逃げる海賊達。
追う海軍。
壁の向こう―――ルフィとエースが見えない。
「―――撃水!!」
聞こえた声に視線をさ迷わせれば、さらに少し弾んだような声が聞こえた。
「ウミから貰うたお守りじゃ!もう随分前じゃて、海楼石だと忘れとったが………役に立ったァ!!」
これは、ジンベエさんの声だ。
お守り―――ウミの蒔いた可能性の種だ。
爆煙の中、ジンベエさんと一緒に走るルフィとエースが、小さく見えた。
ちらりとこちらを振り返ったエース。
生きているなら、良い。
生きてさえいれば―――
海楼石で止められてなお立ち上がろうとするサカズキさんに、白ひげが大きく構えるのが見えて、ウミはまた小さく伏せた。
記憶を頼りに、最後まで崩れずに建っているはずの建物の隅にしがみつく。
ボゴゴゴオォン―――!!
「崩壊する!海軍本部が…!!」
「崩れる〜〜〜!!」
激しく崩れ落ちる海軍本部。
そして、マリンフォードの島そのものも。
「完全にオヤシと隔離されちまった!!」
「広場が真っ二つに裂けた!海賊達が向こう岸に!!」
土煙にむせながら、それでもウミは何とか留まった。
サカズキさんだって、大丈夫なはずだ。
あと、少し。
あと少しで、最後の可能性―――
「本部要塞の陰に何かいるぞォ!」
海兵の叫びに、ようやっとだと、ウミは震えた。
「それだけじゃない!処刑台の上にいるのは誰だ…!」
驚愕するセンゴクさん。
愉快だと笑うドフラミンゴさん。
そして、こちらを睨む白ひげ。
「ゼハハハハハハ!!久しいな!…死に目に会えそうでよかったぜ、オヤジィ!!」
目と鼻の先に、黒ひげティーチがいる。物語の通りに、囚人達を引き連れて。
ウミは、ゆっくりと立ち上がった。
「そいつらの解放が目的だったのか!!」
服についた土埃を払う。
「ゼハハハハ!そうとも。初めからそれだけだ。そしてこれが全て!今にわかる………ん?」
爆風でぼさぼさになった髪に手を通したところで、ティーチがこちらを向いた。
「何だァ…?おまえ、海兵か?」
目があって、曖昧に笑ってみせた。
…怖い。
けれど、どうしても『明日』が欲しい。
生キタイと、思う。
だから、怖くない。
怖クナイ。
怖くないと、言い聞かせる。
「ウミ!?」
叫んだのは、誰か。
ウミにはちゃんと、呼んでくれる誰かがいる。