ワンピース
□戦場にて2
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ボゴオォーン!!
白ひげがグラグラの実の能力で氷塊を壊す。
「海賊なら!信じるものはてめェで決めろォ!!」
病気はともかく、怪我はわずかだ。
「おれと共に来る者は、命を捨ててついて来い!!」
「構えろォ!暴れ出すぞ!世界最強の男がァ!!」
わあぁアアァ―――
いきり立つ海賊達。
島ごと、揺れる。
ウミは建物の端にしがみつく。
落ちるなり瓦礫に埋まるなりしたら、ここにいる意味がない。
白ひげの攻撃が巨人族を越えて処刑台に向かうが、三大将が防ぐ。
包囲壁が湾を囲んでいく。
しかし、ウミの記憶とは異なる。
「おい、どうなってるんだ!完璧に作動させろ!!」
一部、オーズが押さえているのだ。足の怪我のせいか、座り込んだまま。
「オーズ、この壁引っこ抜いちまえ!」
「わがったァ゛〜!!」
相変わらず肩にいるサッチの言う通りに、オーズは巨体を動かし、押さえていた壁に手をかける。
メリメリ、バキッと嫌な音………壊れる。
巨体に向かってくる砲弾は、サッチや他の仲間達が切り捨てていく。
「お゛ォオオ〜〜〜!!」
放り投げられた壁が、マリンフォードの街を潰す。
こんな力で破られるなんて、想定していなかっただろう。
壁一枚分の道は、ウミの記憶と同じ。
さらにもう一枚―――
「締まらんが…始めろ赤犬!」
マグマが迫る。
バキィッと、二枚目の壁が取れた。
「やべッ…オーズ、それ上にしろォ!!」
サッチが叫ぶ。
それとは、引き抜いた壁だ。
「うわああぁあ!!」
湾内の氷が溶ける。
マグマに消えていく海賊達。
燃えるモビー・ディック号。
けれど、オーズの掲げる壁の影は無事だ。
「この壁、ただの鉄じゃねぇな。赤犬のマグマ防げるってこたァ…海楼石か!?」
オーズとサッチにとっては、幸いだった。
白ひげが壁を壊そうとするが、やはり能力は通じない。
「…急げ!これより速やかに、ポートガス・D・エースの処刑を執行する!!」
とにかく壁を壊そうとするオーズと、それを援護する海賊。阻もうとする海兵。
壁二枚―――ウミが知るより広く開いた壁だが、それ以上は海軍も許さない。オーズとサッチは、自分を守るのに精一杯だ。
見えない壁の向こうから、水柱が上がる。
船のマストを抱えたルフィが、三大将の前に着地した。
―――無茶で、無鉄砲だ。
そのエネルギーが眩し過ぎて、先を知っている事に耐えられなくて、ウミはルフィから離れた。
離れていれば、物語を目の当たりにしなくて済む。
蹴り飛ばされるルフィ。
………出せる手はない。
エースに振り下ろされる刃を防いだのは、クロコダイルさんだ。
ウミの知る通り、海軍が喜ぶ顔は見たくないと。
一瞬、目があった…?
次いで、目があったのは不死鳥マルコ………目をそらしたのは、ウミだ。
「元帥殿!湾内の海賊達が妙な動きを!!」
ザバァン、と潜んでいた船が現れる。
「外輪船です!突っ込んで来ます!!」
そこにいる海賊達の数は、おそらくウミが知る物語より多い。
「うわあああぁあ〜〜〜!!」
「船を引き上げやがったァ〜〜〜っ!!」
黒鯨がオーズによって広場に上がる。自力ではい上がってくる者もたくさんいる。
壁二枚、物語よりも広く開いた分、白ひげに有利だ。
広場に降りた白ひげが、薙刀をひと振り―――
「野郎共ォ!エースを救い出し!海軍を滅ぼせェエェェ!!」
ボルサリーノさんが、またルフィを止める。
「力がねェのなら…救えねェもんは頑張ったって救えねェよォ…」
その言葉の通り『力』がなくては、救えない。
ウミにあるのは、ほんのわずか―――可能性だ。
ルフィが白ひげのところまで蹴り飛ばされた。
インペルダウンからずっと戦い通しなのだ。力無い体は、十年前より成長しているが、この戦場では細く小さい。
処刑台へ向かってきた不死鳥を、ガープさんが殴り飛ばした。
「ここを通りたきゃあ…わしを殺していけい!ガキ共!!」
………大丈夫。
上手くいけば、ガープさんはまた笑える。
また、笑ってくれる。