ワンピース

□戦場にて2
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「元帥殿。準備が整いました」

処刑の準備が始まる。
指示を出すセンゴクさん。
湾頭に現れたパシフィスタ。

変わって行く戦況。



「包囲枠から外れた者達を始末せよ!!」



パシフィスタの一方的な攻撃を、少し冷えた頭で眺める。

追い込まれまいと戦う海賊達。
切られていく映像。
バギーに少し笑ってしまった。



私は、ティーチを待つだけだ。

ルフィにもエースにも、もう出来る事はない。

サッチが生きているという事は、私の用意した可能性は、ちゃんと渡ったはずで、ちゃんと活かされるはず。





だから…きっと変わる。





遠くに見える白ひげの隣に、剣を持ったスクアードの姿が見えた。



少し、祈る。










その切っ先が肉を裂くと同時に、青い炎が突っ込んだ。

「スクアードォ〜〜〜!!」
「…く……!」

ガランッと、刃が落ちた。





可能性―――不死鳥マルコ。





「オヤジィ〜〜〜!!」

「白ひげが…刺されたァ〜〜〜!?」

青ざめる海賊達と、好機だと攻め立てる海兵達。



スクアードは、取り押さえられてなお叫ぶ。

「…お前、なんて事を!!」
「うるせェ!!」

白ひげの腹から、わずかに血が流れる。

ほんのわずか…少しだけ切られた腹部。
出血も少ない。





…処刑台の隅で、小さく息を吐いた。

これで十分、変わるはず。



コレデ『明日』ガ来ル。





「こんな茶番劇やめちまえよ!白ひげ!!」

この叫びは、白ひげが受け止めるものだ。





動揺する海賊達。

その間も攻撃はやまない。





「かすり傷だけで奇跡だ…もう覚悟はできてる……殺せよ!!」
「バカ野郎!まんまと担がれやがって………スクアード!!」
「てめェまでしらばっくれやがって!マルコォ!!随分白ひげの近くにいたじゃねェか!助かる算段なんだろう!?」
「………お前がロジャーを恨んでる事ァ知ってる!だがな、エースがおまえに何をしたァ!?」
「マルコ、手ェ放せ…」
スクアードの胸倉を掴むマルコを、白ひげが制す。

少し、記憶と違う。

違って行く。

「エースがロジャーの息子だってのは事実…それに最も動揺する男を振り回した………奴らの作戦がおれ達の一枚上をいったんだ」
グイッと血を拭き取って、白ひげは向き直る。
「スクアード…おめェ仮にも親に刃物向けるとは……とんでもねェバカ息子だ!!」

たった今、自分に刃を向けた息子を、白ひげは躊躇なく抱きしめた。



「バカな息子を―――それでも愛そう…」



愛、か…。

それは、ウミが失ったものに似ている。





「マルコ、助かったが…おめェこうなると勘づいてやがったな?兄弟疑うとは……サッチとティーチの時もだなァ?」
「…後で話すよい」
マルコは、少しだけ白ひげから目をそらした。

そのやり取りに、確信する。



ウミの用意した可能性は、ちゃんと渡って活かされた。



小さな可能性―――










フーシャ村の赤ワイン。



十年経って出た、ルフィの手配書。
漫画の通りに、ミホークさんがシャンクスさんにそれを届けた。

そして、開けられた酒瓶。

そのラベルの裏に隠した手紙。





シャンクスさんはちゃんと気づいて、ちゃんと届けてくれたのだ。










『不死鳥マルコへ

 サッチは
 悪魔の実に
 殺される

 スクアードは
 自刃する』



白ひげでも他の隊長達でもなく、一番隊隊長に宛てた、短い文。それも四皇赤髪が届けた手紙。

おそらく彼は、他の誰にも言っていない。
ただ、家族を心配するように。ただ、いつも以上に気にかけるように。
小さな異変に気が付くように。

不可解な言葉を、ウミはマルコに送ったのだ。

まだ、サッチが殺される前に。


 
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