ワンピース
□戦場にて2
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戦争は続いている。
正義を背負う海兵と、こちらに向かう海賊。
七武海と、白ひげ隊長。
オーズとサッチも足止めを喰らっている。
一進一退…
そう簡単には、変わらない。
歯を食いしばっていたエースが、ゆっくりと前を向いた。
「…もうどんな未来も受け入れる。差し延べられた手は掴む…!おれを裁く白刃も受け入れる……」
…コレは、嫌いだ。
「ジタバタしねェ。みんなに悪い」
静かに戦場を見下ろすエース。
ジリッと、何かがウミを追い立てる。
足掻け…。
ガープさんの隣、エースを睨む。いや、違う。私がエースに憤るのは、筋違いだ。
けれど、嫌いだ。
足掻け。
惜しめ。
生きているのは、当たり前の事だから―――
ジリジリと追い立てるような感情を、グッと眉間に力を寄せて、堪える。
ウミは、知っている。
腹に子を宿す母親を、生まれてくる命というものを、知っている。かつての世界で―――姉と小さな甥を。
エースとて同じだ。
生きてさえいてくれればと、その命に、命をかけた親がいる。
ウミにとって、生まれた命が生きてるのは当然の事だ。
それは、かつての世界で生きてきた、ウミの価値観―――この世界では、甘い綺麗事でしかない。ドフラミンゴさんが言うはずだった『戦争を知らない子供の価値観』だ。
エースが生きるのに、誰に許される必要もない。良いも悪いもない。海賊として、自分のした事で裁かれるのも、当然だけど。
ただのエースとして生きて、死ねば良い。
この世界では、それがとても難しい。
人が生まれて生きているのは、当然だ。
命は、足掻いて惜しむものだ。
ふと、センゴクさんと目があった。
「何ですか?」
「いや…」
眼下では、戦争が続いている。
センゴクさんとて、わかっているのだ。
赤子に罪はない。ただ脅威は排除しなければ、海軍は勤まらない。そして実際、エースは海賊だ。
「…私、隅の方にいます」
「む、そうじゃな」
もうじきこの処刑台も、騒がしくなる。
ここが崩れても巻き込まれないように。ガープさんから離れて、台を降りた。
それにこの後、ウミが何かを言うまでもなく、エースはちゃんと命を惜しむ。
怒声と地なり。
爆発と噴煙。
銃声と刃のぶつかる音。
左右へそれて行く海賊達。
モリアと戦うジンベエさん。
スモーカーに押さえ込まれたルフィを助けるハンコックさん。
くまさんとドフラミンゴさんと対するイワンコフ。
クロコダイルさんに巻き込まれるバギーと囚人達。
処刑台へ向かうルフィに、ミホークさんが黒刀を構える。
「鷹の目!」
回避するルフィ。
そして、それを追わないミホークさん。
―――追わない。
「鷹の目!なぜ戦わない!?」
それを見たセンゴクさんが叫ぶ。
「…白ひげと戦う以外、知らん。協定の範囲外だ」
「何ィ〜〜〜!?」
ちらりとこちらを見たミホークさんが、少しだけ笑ったように見えた。
「確かに、無茶な弟だ…」
その呟きは聞こえなかったけれど。
ウミの『弟』に『何もしない』。己が了承した事を、ちゃんと守ってくれたのだ。
「おれが相手をしよう」
ガキィインと、ミホークさんと刃を打ち合わせるのは、シルクハットの男。
「…白ひげ海賊団。五番隊隊長花剣のビスタ」
「おれを知ってんのかい」
「知らん方がおかしかろう…」