ワンピース

□戦場にて2
1ページ/5ページ


戦争は続いている。



正義を背負う海兵と、こちらに向かう海賊。

七武海と、白ひげ隊長。

オーズとサッチも足止めを喰らっている。



一進一退…





そう簡単には、変わらない。





歯を食いしばっていたエースが、ゆっくりと前を向いた。

「…もうどんな未来も受け入れる。差し延べられた手は掴む…!おれを裁く白刃も受け入れる……」



…コレは、嫌いだ。



「ジタバタしねェ。みんなに悪い」

静かに戦場を見下ろすエース。

ジリッと、何かがウミを追い立てる。





足掻け…。

ガープさんの隣、エースを睨む。いや、違う。私がエースに憤るのは、筋違いだ。

けれど、嫌いだ。



足掻け。

惜しめ。

生きているのは、当たり前の事だから―――



ジリジリと追い立てるような感情を、グッと眉間に力を寄せて、堪える。





ウミは、知っている。

腹に子を宿す母親を、生まれてくる命というものを、知っている。かつての世界で―――姉と小さな甥を。

エースとて同じだ。
生きてさえいてくれればと、その命に、命をかけた親がいる。

ウミにとって、生まれた命が生きてるのは当然の事だ。
それは、かつての世界で生きてきた、ウミの価値観―――この世界では、甘い綺麗事でしかない。ドフラミンゴさんが言うはずだった『戦争を知らない子供の価値観』だ。

エースが生きるのに、誰に許される必要もない。良いも悪いもない。海賊として、自分のした事で裁かれるのも、当然だけど。
ただのエースとして生きて、死ねば良い。





この世界では、それがとても難しい。










人が生まれて生きているのは、当然だ。

命は、足掻いて惜しむものだ。










ふと、センゴクさんと目があった。

「何ですか?」
「いや…」

眼下では、戦争が続いている。

センゴクさんとて、わかっているのだ。
赤子に罪はない。ただ脅威は排除しなければ、海軍は勤まらない。そして実際、エースは海賊だ。

「…私、隅の方にいます」
「む、そうじゃな」
もうじきこの処刑台も、騒がしくなる。
ここが崩れても巻き込まれないように。ガープさんから離れて、台を降りた。



それにこの後、ウミが何かを言うまでもなく、エースはちゃんと命を惜しむ。










怒声と地なり。

爆発と噴煙。

銃声と刃のぶつかる音。



左右へそれて行く海賊達。

モリアと戦うジンベエさん。

スモーカーに押さえ込まれたルフィを助けるハンコックさん。

くまさんとドフラミンゴさんと対するイワンコフ。

クロコダイルさんに巻き込まれるバギーと囚人達。



処刑台へ向かうルフィに、ミホークさんが黒刀を構える。

「鷹の目!」

回避するルフィ。

そして、それを追わないミホークさん。



―――追わない。



「鷹の目!なぜ戦わない!?」
それを見たセンゴクさんが叫ぶ。
「…白ひげと戦う以外、知らん。協定の範囲外だ」
「何ィ〜〜〜!?」



ちらりとこちらを見たミホークさんが、少しだけ笑ったように見えた。

「確かに、無茶な弟だ…」

その呟きは聞こえなかったけれど。
ウミの『弟』に『何もしない』。己が了承した事を、ちゃんと守ってくれたのだ。



「おれが相手をしよう」

ガキィインと、ミホークさんと刃を打ち合わせるのは、シルクハットの男。

「…白ひげ海賊団。五番隊隊長花剣のビスタ」
「おれを知ってんのかい」
「知らん方がおかしかろう…」


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ