ワンピース
□海軍にて2
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何が好きなんだろうとか、どれくらい食べるんだろうとか。
全くわからない。
家庭料理って………。
エレファントホンマグロの焼き魚に根菜の煮物。豚肉と茄子の味噌炒め。胡麻和えと豚汁ときのこご飯…もうこのくらいで良いかな。めんどい…デザートに羊羹も用意しておく。
いつもはもうちょっと、かなり適当だ。
ガープさんの機嫌が悪い。
「せっかくのウミとの時間が…助けられたとは言え…ボルサリーノめェえ!」
昨夜から呻いている。
聞かなかった事にしよう。
こっちは準備で手一杯だ。
「くうぅッ、ウミ!何故いつもより豪勢なんじゃ?あやつらには犬の餌でも食わせておけば良い!!」
「いえ、あの、お客様なので」
あ…赤『犬』って人がいたなぁ。
夕食時、本当に来た三大将。
暇なんですか?
「おー…、美味しそうだねェ」
「美味いに決まっとる!」
「わしはさっさと食うて帰るぞ」
「味わって食わんかぁッ!!」
「良いね、手料理。ウミちゃん、いつでもお嫁におい―」
バキィッ―――
氷が砕けた。
「何か言うたか?青二才ぃ!!」
「イィエ、何モ…」
パキパキと復活していく氷から、距離を取った。
「いただきます…」
圧迫感を感じるテーブルで、一人静かに手を合わせる。
「貴様らもありがたく手を合わさんか!」
止められないので、ガープさんも三大将もスルー。
おっさん達が手を合わせている姿は、見ない振り。
…おつるさんを呼べば良かった。助けて欲しい。
「わっし、胡麻和えなんて久しぶりに食べるよォ〜」
「一生食わんで良い!」
「まぁなかなかの茄子じゃ」
「なかなかとは何だ!?絶品じゃ!!」
「あー、豚汁あったまるねぇ」
「溶けてしまえェ!!」
………うるさい。
「煮物も味がよく染みてるねぇ。美味しいよォ〜」
「当然じゃ」
「エレファントホンマグロは旨いのぅ」
「何でも美味いに決まっとる!」
「きのこご飯なんて食堂にはないね」
「食堂ごときと一緒にするなァ!!」
………とにかくうるさい。
一通り食べ終えて、片付けようと席を立つ。
「あぁ、片付けは俺達でするから。任せなさいな」
え?
「そうだねぇ。ご馳走になっただけじゃあ申し訳ないからね〜。サカズキも〜」
「…まぁ、運ぶくらいはしちゃる」
え゛?
「…ぁ、あの」
皿洗いをする三大将―――キッチンでぎゅうぎゅうに肩寄せて洗い物をする姿を想像して、すぐに振り払う。
何かが怖い。怖いコワイ。
「座っててください。私の仕事ですので」
「遠慮しなくて良いよォ〜」
してません。
「子供は座っちょれ」
その子供にご飯作らせたのはあなた達です。
「そうそう。美味しいご飯のお礼。それとも何か欲しい物ある?」
いえ、結構です。
あ、欲しい物―――
「そ、それじゃあ…海楼石が欲しいです!」
我が身の安全のために。
「…わっしら、拒否された気がするよォ〜」
「俺とサカズキの喧嘩に巻き込んじゃったから…ちょっと悲しくなって来た」
「つまりィ、わっしは飛ばっちりだよねぇ〜」
「一番の飛ばっちりはわしじゃあ!今日とて仕事があるのに…そもそもクザンがサボるんが悪―」
「あの」
「「「!」」」
一気にこちらを向く三人。
かなり怖い。
「よ、羊羹あるんですが、食べませんか?」
ここで喧嘩されたくないので、勇気を振り絞って声をかけた。
その私の背後でガープさんが凶悪な顔ですごんでいたから、三人とも大人しく座りなおしたなんて、知らない。うん、知らない。