ワンピース

□海軍にて3
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サラサラ…と。

砂だと認識すると同時に、ゾワッと鳥肌が立った。
くまさんにコートを渡しかけた姿勢のまま、固まってしまう。



あっという間に砂の量は増え、スーツ姿の凶悪な人が現れた。

「よぅ、熊野郎」

私には、目もくれない。

「俺のコートだ。返してもらうぜ」
「…拾ったのは私ではない」
「あ?」
認識はされていたようで、ぎろりと見下ろされた。人相が悪過ぎる。
「チビ、海兵見習いか?」
「いえ…」
「ガープ中将の孫だ」
「ゲンコツガープの?」
「はい、そうです」
じろじろと品定めするように見られて、ちょっと嫌だ。

「さっき、コートと一緒に落ちて来た」
え、それは言わなくて良いのでは?
見上げるくまさんは、やはり表情が読めない。
「落ちて来た、だと?」
「彼女がそこのテラスに座っているところに、このコートが落ちてきたのだ。そのまま下に落ちた」
「あ、いえ、くまさんが受け止めてくれました」
コートごと落ちたとか、少し土汚れがついたとか。怒りを買ったら恐ろしい。

「………要は、俺のコートのせいで事故ったんだな」

まぁ、そうとも言う。

「何故、コートが落ちてきた?」
「窓んトコに置いてただけだ」

金色のフックが、コートを取る。

怒ってはいないようだ。

バサリとコートを羽織ったクロコダイルさんは、記憶で見慣れた姿だ。

「チビ、大丈夫か?」

え?

「怪我ァねぇか?」
「はい」

え?
あれ?

普通に心配されている。
何故?



まぁ、そうか。
ここで何か事件を起こすなんて、軽率だ。均衡するくまさんだっている。
何より、私にいちいち構う理由はない。

海賊とはいえ、普通に大人なのだから、子供相手に言い掛かりの小さな事でキレていたら、ただの小物だ。

「おい、ガープには言うなよ」



…はい?



「めんどくせェからな」



ガープさん………それが理由か。

けれど、心底嫌そうな表情に納得してしまう。



「あぁ゛、不満か!?なら何か買ってやろうかァ?」

思わずじっと見上げていたら、何か勘違いをされた。

………すごんでるのに、内容が残念だ。

この人子育て失敗するなぁ、とか。私もの凄く子供扱いされてるなぁ、とか。
半笑いになりかけて、堪える。

「特に、欲しい物はないです…」
「てめェ、何笑ってやがる?」

堪え切れなかった。

ザァッと砂になりかけたのが見えて、とっさにくまさんの手を掴んだ。

「クロコダイル、子供をからかうのはやめろ」
「チッ…面白くねぇなァ」

からかっていたのか。
ガープさんに関しては本気のような…。

「怖がらせて悪かったなァ」
「はぁ…」
何かもう怖くない。
微妙だ。
「クハハハ、まァ何かあった時には言えよ。聞いてやるぜ?」

ニヤリと笑って、クロコダイルさんは砂になって去って行った。
全く怖くもかっこよくもない。



「私も行く。次からは気をつけろ」

何に?

去って行くくまさんの巨体を見送って、脱力してしまった。


 
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