ワンピース

□海軍にて3
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意図せず、出会う。



いつも通りに、ぼんやりしていた。
階下の庭に迫り出したテラス。調度良い高さの手摺りに腰掛けて、ひなたぼっこ状態だった。

突然、バサリと音がして、目の前が暗くなった。

それと同時に、ぐらりと傾く。



あ―――と思った時には遅く、落下する私の手は宙を掴むのみ。





衝撃を覚悟して縮こまらせた体だが、ポスンと柔らかく受け止められた。

「…大丈夫か?」
「ぇ、あの…」

暗闇の中、もぞもぞ足掻いて明るくなった視界に、目を細める。
しばし瞬いて見えたのは―――七武海、バーソロミュー・くま。



…くま?くまさん!?

思わず、その手を確認してしまう。手袋をしている…良かった。

縮こまったまま、首だけきょろきょろ。やはり私はテラスではなく、その下にいる。
視界を奪ったのは、黒い厚手の布―――コートだ。どこかから落ちてきたコートのせいで、テラスから落ちた私は、調度下にいたくまさんの手の平に受け止められたのだ。

「…すみません。ありがとうございます」
手の平の上で頭を下げた。
とりあえず早く下ろして欲しい。

「あの…下ろしてください」
「ガープ中将の孫、ウミだと記憶している」
「あ、はい」
知られているのか。

「…親は、どうしている?」

わずかに、震えた。
俯いて視線をそらす。
「………親は、わかりません。遭難して、ガープさんに拾われました」
「そうか」
そっと下ろされた。
「気をつけろ。次も運が良いとは限らない」
「はい…」
表情がわからない顔が怖い。

くまさんが確認したいのは、ドラゴンと関係があるか否かだ。
私が拾われた事は、調べればわかる。

決して、私の異質に気づかれた訳ではない…はずだ。



彼には彼の、よくわからないが事情がある。
ルフィの冒険を変えないようにと、出来れば会いたくなかった人だ。

ゲッコー・モリアもそうだ。



そして、もう一人―――





「それは、七武海の一人、サー・クロコダイルの物だろう」
「はぁ…急に落ちて来ました」

それ、とは私の手にあるコート。何故これが落ちてきたのか、謎だ。
七武海の召集で、マリンフォードにいるのは知っている。だから、くまさんもここにいるのだ。

触り心地の良い上質な黒いコート。ふさふさのファーのついているデザインは、見覚えがある。



上のほうを見上げても、これといって気配はない。ウミに気配なんてわからないが。

………コート、届けないとダメだろうか。

不用意な事をすれば、ルフィにもビビにも関わる、重大な変化が生じる。
良い変化とは限らない。
だから、関わりたくなかった。

しかし、好奇心もある。



「持って行こうか?」
「あ、はい。じゃあ…」

コートをくまさんに渡そうとしたら、サラッと砂が舞った。


 
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