ワンピース
□海軍にて3
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のんびりと、時間は進んで行く。
まるでこれが当たり前のように。
このまま、マリンフォードで過ごす日々がずっと続くかのように。
ふとした時に、物語を思い出す。
マリンフォードは、今はまだ静かだ。
「こんにちは」
少しドキドキしながら声をかければ、相手は随分と驚いたようだ。目を見開かれて、きょろきょろされた。
「ワシか?」
「はい。こんにちは」
「あ、あぁ…?」
巨体がわたわたしているのは、ちょっと可愛い。
「ジンベイさんですよね」
「いかにも」
七武海の召集でマリンフォードにやって来たジンベイさん。庭にいて話しかける機会を伺っていた私は、ちょっとした不審者だろう。しかし、ここの散策を常としている私を、兵士達は誰も気にしない。
「…お嬢さんはワシが怖くはないか?」
「いいえ」
むしろ愛らしいとさえ思うのは、私がすでに彼の人柄を知っているからだ。
魚人は怖れられるか、蔑まれるか。差別の対象だ。普通に話し掛けられて、驚いたようだ。
「海軍中将モンキー・D・ガープの孫です。ウミと言います」
「おぉ、ガープ中将の!」
手を打って納得された。ガープさんの名前を出すと、何でも有りな気がする。
「ちょっとお聞きしたい事があるんですが」
「何じゃ?」
「魚人族にとって、海楼石って何か効果ありますか?」
「海楼石?」
きょとりとされた。
「海の中にいるような気分になったり、元気になったりとか…」
「いや…特に何もない。そんな事が聞きたかったのか」
子供らしいと思われたのか、にんまりと笑われた。
それがジンベイさんとの出会い。
意図した出会いだ。
新聞や手配書、ガープさん達からの話―――物語は、進んでいる。
―――火拳のエース。
「エースの奴、七武海を蹴りおったわい!」
嬉しいのか、哀しいのか。ガープさんは愉しそうに笑っていた。
じわりと、追い立てられる。
そろそろ―――
否、まだか?
また、七武海の召集がかかる。
まだ、エースの処刑は数年先だ。
「こんにちは」
「おぉ、ウミ。久しいな」
もはやジンベエさんとは顔見知りだ。
「クッキー食べませんか?」
「うむ、茶はあるでな」
お茶を飲みながら、わざとネックレスを弄る。その目にとまるように。
「そういえばそれは海楼石か?」
「はい…ジンベイさん、つけてみます?」
首から外して掲げて見せれば、笑顔で子供の遊びに付き合ってくれる。
「まぁ、海が一緒にあるような気はするかのぅ?」
その一言に、少し笑みを深くした。
「あげます」
「は?」
「お守りです。能力者と戦う事もあるでしょう?」
「確かに。この間も火…あぁいや、調度能力者と戦ったばかりじゃて」
火―――火拳のエースか。
私の首にぐるぐる巻きになっていたネックレスは、ジンベイさんの首に調度良かった。