ワンピース
□戦場にて
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「ウミ、今からでも避難おしよ。一隻くらいなら出せるだろうから」
「おつるさんこそ」
ずっと避難しろと言い続けてくれるおつるさん。
私は戦場にいるべき存在ではない。
「私はまだまだ現役さ。ウミこそ兵士でもないだろう?怖じ気づいてる連中もいるようだし…ありゃ邪魔だからね。一緒に。早くしな」
今さら引く気はない。
それはきっと、わかってくれているはず。
「自分で選べるなら、ここにいます」
選べるなら―――
「おつるちゃん、大丈夫じゃ!ウミはわしが守る!」
「…あんたも戦力なんだがねぇ」
笑い飛ばすガープさんに、ため息をつくおつるさん。この数年の間に、何度も見た光景だ。
微笑んでいる私は、やはり戦場では異質だろう。
選びようもなく来た世界。
コノ世界デ生キルナラ―――
「はぁ…」
クザンは一人、片肘を膝について頭を抱えた。
三大将の並んでいる処刑台の下、祖父と孫娘の会話は、彼らの耳にはよく聞こえた。
「ため息吐くと幸せが逃げちゃうよォ〜?」
「あの会話聞いたら、ため息くらい出るって」
「そうだねぇ〜。強制的に避難させても良いんだけどォ…誰も嫌われたくないからね〜」
ボルサリーノの言う通り。
しようと思えば出来るのだ。けれど、ガープをはじめ誰もそれをしなかった。
それは、あの子が愚かしいからではない。
ウミは言葉の通り、自分で選んだのだ。
「変なところでガープさんに似てるよ」
「…ふん、死んで構わんっちゅう事じゃ!戦場に一般人もクソもないわい!!」
二人に挟まれていたサカズキが口を出す。
「まぁ、そうだよねェ〜…」
「はぁ………やるだけやるしかないか」
戦場で迷うほど、危険な事はない。
「諸君らに話しておく事がある―――」
センゴクさんの放送が、ほんの少しだけ遅れて始まる。
遅れたと知っているのは、ウミだけだが。
「おれの親父は白ひげだ!」
「お前の父親は、海賊王ゴールド・ロジャーだ!!」
すぐ隣のガープさんを見上げる。目があって笑えば、反射的にか少しだけその口角が上がった。
ガープさんには笑っていて欲しい。
「お前が母親の名を名乗―」
広場のざわつきの中、兵士がひとり駆け寄って来る。
「センゴク元帥!!報告します!」
それは、タイムラグの証。
「何だ!?放送の途中だぞ!」
「正義の門が誰の指示もなく開いています!!動力室とは連絡もつかず…」
「何だと!?」
ウミがエースに話し掛けた分、センゴクさんの放送が短くなったのだ。
ロジャーの名の部分までは、短くならなかったが。
「来たぞォー!」
「全員戦闘体制!!」
放送が終わる前に現れた海賊団。
そして―――
「モビー・ディック号が来たァ〜〜〜!!」
湾内に現れた巨大な船。
「湾内に侵入されました!」
「14人の隊長達もいます!!」
―――14人。
目を凝らす。
しかし、ウミの目では目的の人は見つからない。いや、そもそもいないのだ…。
モビーから現れたのは、白ひげ、エドワード・ニューゲート。
「おれの愛する息子は、無事なんだろうな……!!」
白ひげの他に、人影はない。
「ちょっと待ってな…エース!」
「オヤジィ!!」