ワンピース

□はじまり
2ページ/2ページ


オカシイナ。

夢ナノニ船酔イシテル。



軍艦での生活が数日過ぎた頃、目的地が近いと告げられる。
そういえば、どこに向かっているのか聞いていない。

食事やら服やら、体調やら。
最初に私を見つけた人達を筆頭に、軍艦の人達はあれこれと世話を焼いてくれている。過ぎるほど。
ぼんやりと過ごす子供に向けられる目は、優しさと憐れみだ。
私は嵐で難破して、家族もわからない。そう思われているようだ。誰もその事については口にしない。
聞かれたところで答えようがないが。



ふらふら、ゆらゆら。

揺れる。



「おーい、新しい服作ったんだ。可愛いだろ?」

…ピンクのふりふり布地が軍艦にあった事に、心中でツッコミ。誰の趣味?

アァ、夢ダカラ。

「おやつはパンケーキだぞ。特別にクリーム大盛りだ!いっぱい食え!」

……果物も盛り沢山だ。航海中なのに、フルーツ無駄使いして良いの?

マァ、夢ダカラ。

「あ、良く寝れたか?昨日は寒かっただろ?後で毛布持って行くからな」

………寝る?

今ガ、夢ノ中デショ?



私に向けられるのは、やはり気遣いだ。

あんな大きな嵐にあって。

急に家族を失って。

まだ幼いのに。

泣きもしない、小さな小さな女の子。





小さな手だ。

ゆらゆらと揺れる甲板。背中に日を受けて、自身を見下ろす。
足も手も、ふくっとした子供のもの。

自分の手は、こんなに小さくなかったはずだ。



大人達を見上げる。

海軍に相応しく、大柄で筋肉質な男達。それ以上に大きなガープさん。

ワンピースなのに、何故ガープさん?
ガープさんが駄目なわけじゃないが。ルフィでも麦藁でも白ひげでもなく、何故かガープさん。

私の夢想は、主要キャラとは遠いのだろうか。



変ナ夢ダナァ。





「甲板は風邪引くぞ〜?」
俯いていた私に、海兵の一人が寄って来る。
「…酔った」
「は?」
手足を見て下を向いていたせいか、船酔いが悪化した。
「ぅ、え…」
「!?」
おやつのパンケーキをリバース。
「うおぉい!?だ、誰か、医者ー!!」

夢なのに、苦しい。










船酔いの覚めた頃、目的地に着いたと告げられた。

「わしの故郷じゃ」

にんまりと嬉しそうに笑うガープさん。

「良い所だぞ。おぉ、そうじゃわい!ウミ、この村で暮らすと良い。わしの孫がおるんじゃ」



そこにいたのは、小さな小さな男の子。



「誰だ?」
「ルフィの姉ちゃんじゃ」
「へー、姉ちゃんかぁ………えぇええェー!?俺、姉ちゃんいたのか!?」

麦藁ぼうしは、まだない。

「おい、おまえ!俺の姉ちゃんか?」

丸い目をきらきらさせて聞いてくる子供。嬉しそうに頬を紅潮させている。

「そうじゃ。ウミは今日からルフィの姉ちゃんじゃ」
「うおォ〜、すっげェ!!」

否定は、しなかった。

「ウミ、よろしくな!」
「…よろしく」

握られた手が、少し痛い。


 
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ