ワンピース
□はじまり
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この世界の一番最初の記憶は、不快感。
暑いのか寒いのか、よくわからない気怠い感覚。
眩しさに目を細めながら、何故か動かしにくい体をゆっくり起こす。
耳に聞こえたのは、波の音。
肌に触れるのは、ザリッという白い砂。
目に映るのは、青い空と明るい光。
「子供がいるぞ!」
「生存者か」
「ガープ中将に報告…の前に保護しろ!医者〜!!」
遠くに聞こえた言葉達は、頭の中まで入ってこない。
私は、私自身を見つめていた。
小さな手。
小さな体。
擦り傷だらけ。
ベタベタとした濡れた服。
目の前には、白波を立てる青い海。
…何故、海?
何の夢かと、ぼんやりと考える。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
人が近づいて来ているのには、気が付いていた。
声のほうを向けば、数人の男の人。白い揃いの制服を着ている。
「どこか痛いか?」
「…」
「見たところでかい怪我はないな。立てるか?」
「……」
「水飲むか?腹も減ってるだろう?」
「………」
無言のままぼけっとしている私に、おっさん&お兄さん三人は、顔を見合わせる。
「まさか、しゃべれない?」
「有り得る。あれだけ大きな嵐だったんだ。精神的に参ってもおかしくない」
「俺らだって怖かったんだ。こんな小さな子じゃあ…」
何となく、悪い感じはしない。
「あの」
「「「!!」」」
声をかけたら、一斉にこちらを向かれて、固唾を飲まれた。
とりあえず―――
「お風呂、入りたいです」
ベタついてて気持ち悪い。
ベタついてるなんて、変なの。
変な夢―――
「…そ、そうか。風呂か。それと着替えだな。女の子だもんな」
「女の子って…軍艦に女の子用の服なんてないぞ」
「適当に見繕ってみるか?」
顔を見合わせて、うんうん頷きあっている人達は、何だか面白い。
「何か服探してくる」
「俺は医者呼んでくる」
「この子、船に運ぶぞ」
二人がサッと走って行ったと思ったら、残る一人がこちらに手を伸ばす。
ひょい、と抱えられた。
「船まで行くからな」
船?
私が首を傾げると同時に、おっさんは結構な速さで砂浜をかけて行った。
速い。
さすが夢。
「ガープ中将!女児一名保護しましたー!!怪我なし、健康です!」
ガープ?
中将?
「おぉ、あの嵐で生きとったか!嬢ちゃん、よく頑張った。もう大丈夫じゃぞ!」
目の前で笑みを見せる人を、私は知っている。
漫画で。
「よしよし。心配はいらん。わしが面倒見る!」
首がもげるくらいの強さで頭をなでられて、くらくらした。
それが、この世界の始まり。
帰りたい、なんて。
そう思う事などなかった。
この世界が現実だなんて、ここで生きていくなんて、思えなかったから。