ワンピース

□決戦前
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もうすぐだと思っていた頃に、それは来た。



麦わらのルフィ―――三千万ベリー。



アァ、来タ。

ツイニ来タ。



歓喜に震える。



そして、怖れる。










わずかな可能性は、どうなったのか?





『火拳のエース、アラバスタに現る』

そんな新聞記事を見つけて、心臓のあたりを掴む。
エースはティーチを追っている。物語の通りに。
つまり、白ひげ海賊団の四番隊隊長サッチは殺されたのだ。

アァ、可能性ハ所詮可能性ニ過ギナイ。





『七武海クロコダイル逮捕』

『アラバスタ内乱終結』

そのニュースと同時に、ルフィの懸賞金が上がった。










アト少シ。



もう少し―――





いつものマリンフォードの散歩を終えて帰って来れば、部屋の前に見慣れない青年が二人いた。

廊下の隅で、こそこそしている。

「やっぱりおまえ行け。おまえが直接言われた事じゃねぇか」
「な、何言うんですか!ヘルメッポさんも一緒に言われたじゃないですか!?」

ヘルメッ、ポ…?

「相手はあのガープ中将の孫だぞ?何が出て来るかわかったもんじゃねぇ!」
「ぼぼぼ僕だって嫌ですよ!あの扉を開けたら拳が飛んで来たりして…ヒィ、恐ろしい!!」

それはもしや、私の事か?

「行け、コビー!おまえの勇姿は忘れない!」
「ヒィイ、押さないでくたさ〜いぃ!?」

コビー…?



目が、あった。



「………」



コビーだ。

そうだ。
彼はガープさんの所に来るんだった。

「こんにちは」
「え?へ?こ、こっこっこっこんにちは!?」
吃り過ぎ。
恐がられないように、にこりと笑って見せる。
「私に何か用ですか?」
「は?いや、その、あの」
「ばか!ちゃんと喋れ。俺達、ガープ中将のお孫さんに言付けがあって来たんです」
「はい、そうなんです。ガープ中将のお孫さんに用があって―」
「私です」
「「は?」」



………ガープさん、どんだけ?

あなたの孫までおかしな風に思われてますよ。

まぁ、この二人は散々な目にあわされてるんだったっけ?



「私が、モンキー・D・ガープの孫です」
「「………」」

二人は目を見合わせて、こちらを見て、また見合わせて、またこちらを見る。

「ウミと言います。いつも祖父がお世話になってます。あなた方は?」
「あ!は、はい。僕はコビーと言います!」
「俺はヘルメッポです!」
ヘルメッポは確か、最初は悪人だった人だ。

「言付けって何ですか?」
「はい!ガープ中将は急なお仕事で帰るのが遅れるとの事です!」
「晩御飯は絶対に食べるから片付けないでくれェ!との事です!」
任務だからか、急に敬礼して答える二人に、口元が緩む。内容があれだが…。

「中にどうぞ。お茶でもどうですか?」
「「え?」」
「お仕事に差し支えなければ」
緩く笑って案内すれば、二人はきょとんとしたままついて来た。



「女だったのか…」
「てっきりガープさんみたいな男の人だと…」

「普通だな」
「普通ですね」

「むしろ弱そうだ」
「ガープさんのお孫さんでも人の子ですし、女の子ですもんね…」




ちょっと失礼な内緒話が聞こえてきた。



私は、普通だ。

異質だが。


 
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